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認知症サポーター養成と活躍を支え、地域住民が集まる拠点に -ヒロ薬局 古河店
ヒロ薬局 古河店 前田規子さんのプレゼンテーション
今回は第1回「みんなで選ぶ 薬局アワード」の2次審査をとおして代表薬局に選ばれた6組のうち、茨城県古河市のヒロ薬局 古河店から前田規子さんのプレゼンテーションをご紹介します。
テーマは「薬局に認知症カフェがやってきた。地域住民のサポーター養成から活躍まで」
前田:
こんにちは。私は東邦ホールディングス、株式会社ファーマみらい ヒロ薬局古河店の前田規子です。
ヒロ薬局古河店は、茨城県古河市にあり、隣接して古河赤十字病院があります。
月に約2000枚の処方箋を応需しております。
前田:
いま調剤薬局は高齢化社会に向けて大きな役目を担う拠点として期待されております。それはかかりつけ薬局・健康サポート薬局の推進です。
高齢化社会は進んでおります。数年後には5人に1人が高齢者となり、高齢者増加に伴い、認知症患者が増えてまいります。
私どもは、調剤薬局がかかりつけ薬局の機能を十分に果たし、地域住民へのサポートを先頭となって行わなければいけないと考えております。
そんなとき、ただ地域のかたがたが集まる場としてだけではなく、調剤薬局ならではの、健康を考える、相談のできる、スペシャリストがそろっている場として何かできないか。
1回で終わるのではなく、じっくりと継続して取り組んでいき「あの薬局に行けば」「あそこに相談すれば」と、地域の住民の方がすぐに思いだせる薬局として機能を果たせるように、を目標に始めたプロジェクトです。
私どもは薬局が認知症の人やその家族、地域住民が集まるコミュニティーの拠点にならないかと考えました。
そこで、まずは東邦薬品株式会社の管理栄養チームのみなさんとともに、ヒロ薬局古河店にて認知症サポーター養成講座とステップアップ講座を、認知症カフェの前段階として5回開催いたしました。
古河市の高齢福祉課、地域包括支援センターの協力を仰ぎ、認知症に関する基本的な知識や認知症の患者さんへの対応などを出前講座として行い、オレンジリング※と認知症サポーター養成講座認定証を渡しました。
(※オレンジリング …認知症サポーターの目印となるブレスレットのこと)
その後、第2回から第5回は、薬剤師、管理栄養士、処方元である古河赤十字病院認知疾患医療センター臨床心理士の先生に専門知識を生かした講義を行っていただきました。
前田:
全ての会に参加していただいた方にはその功績を称え、認知症サポーターステップアップ講座修了証をお渡しします。
今年の2月18日には、さらにサポーターを養成するための第2期の講座を開催し、多くの方々に参加頂き、新たに14名のサポーターが誕生しました。
このサポーター養成講座は、今後もさらにサポーターを増やすために定期的に開催していく予定です。
私どもで考える認知症サポーターは、認知症を正しく理解する、このことが重要と考えております。
正しく理解してくださったサポーターをたくさん養成することで、地域を支え、安心して暮らしていける地域づくりを目指していきます。また、調剤薬局であることから栄養管理を含め、健康の維持から認知症予防を医療サポートできることを目指します。
前田:
第5回の講座が終わる頃、サポーターをどう生かすか、このままでいいのか。これからのことを管理栄養士と相談しました。
薬局からの一方的な情報提供ではなく、サポーターが活躍できる場、サポーターが地域住民に予防活動行えるよう支援していこうと考えました。
そうしたことを考えたとき、サポーター同士が集まるコミュニティーの場の提供をヒロ薬局古河店でやっていかなければ…と思いは広がりました。
私たちは、このコミュニティーの場について、オレンジリングの “オレンジカフェ” ※ と、私たちの明るい未来を “ファーマみらい” から、『みらいカフェ』と名づけました。
※オレンジカフェ…認知症カフェのこと
そして養成講座で得た知識を生かしていただき、認知症サポーターが情報共有できる場としてみらいカフェをオープンしたのです。
認知症カフェはいろいろな所でやっています。私どもはこのカフェを調剤薬局で定期的にやることにしました。
調剤薬局で行うメリットは
- 地域住民の方々が気軽に来局して利用できること
- 外来数の少ない曜日の午後を開催日としているので、新たに場所を借りる必要がなくコストが抑えられること
- 薬剤師がいるので、認知症だけではなく、薬など様々な相談に応じることができること
です。
前田:
みらいカフェは古河赤十字病院の認定看護師、理学療法士、作業療法士の協力も得られました。毎回30分ほどの講話で、運動や療識を深めるための講義をしていただいております。
カフェに来てくださった皆さまには、飲み物とお菓子の用意をしています。
有料のカフェが多いと思いますが、みらいカフェではメーカーからの無償提供やサンプルを利用しています。
災害時に火を使わず食べられるおにぎりの紹介や、不足しがちなタンパク質を補うおやつ、とろみのついたほうじ茶など、高齢者に優しい食品の提供を毎回行っております。また、脳トレもしています。
さらに、来ていただいた方には参加した証としてスタンプカードをお渡ししたりもしています。
ここで認知症の方が自分らしさを取り戻し、その自分らしさを持ち続けていただくこと、軽度の症状のときから交流することによって、適切で継続的なサポートを受けることができるようにしていきたいと思っています。
みらいカフェでは、患者さまには歌や手遊び、運動などで予防を。家族の方には介護する上でのお悩みを。それぞれ同じ立場の仲間で話し合い、解決できる場を提供しています。
サポーターの方々には、より専門的な知識を提供しています。また専門家の助言で、介護の工夫や利用できるサービスの情報提供、情報共有ができます。
この取り組みは、中外製薬の病院配布用機関紙にも取り上げていただきました。製薬会社からも注目され、みらいカフェを広く知っていただくことは、私どもの取り組みに大きな力となりました。
前田:
私がこのプロジェクトに参加することになった初めの頃は、いろいろなことを考えました。
認知症の方と家族の方が薬局に集まり、笑顔で昔話をしたり、歌を歌ったり。そんなイメージでカフェが進んでいけばいいなと思っていました。
今、1年半になろうとしています。サポーターの方々は毎回必ず参加を頂き、みらいカフェを盛り上げてくださっています。またサポーターの方がそれぞれのコミュニティーでこの取り組みを紹介してくださっています。
半年前より認知症の方とそのご家族の方も毎回来てくださっており、最初は緊張からか、トイレに何回も行かれておりおましたが、先月のみらいカフェでは、笑顔で歌を歌い、指揮者のように手振りをしておりました。
その姿を見て、サポーターのみなさんと「本当に継続してよかった」と感動する場面もありました。
このみらいカフェは調剤薬局で行われております。私たちは調剤薬局の薬剤師。薬剤師ならではの取り組みを進めていかなければと改めて思っております。
ヒロ薬局古河店に集まった仲間であるサポーター、看護師、作業療法士、理学療法士、管理栄養士、登録販売者、そして薬剤師が、認知症という疾患の正しい理解と知識を広めるために協力体制を強化し、今後も皆さまのために努力をしていきます。
私たちは認知症サポーターを定期的に養成し、認知症患者さんが私たちと同じ地域住民であるように、その人らしく生活ができ、いつまでも住みやすいと感じられるような環境を地域全体に広げていくことが使命と考えております。
ヒロ薬局はいつもあなたのそばで皆さんの健康をサポートしていきます。
「ヒロ薬局は、おめぇのそばにいっぺよ!」
これは茨城弁です。ご清聴ありがとうございました。
(拍手)
司会:
前田さん、ありがとうございました。続きまして審査員のかたがたからコメントを頂戴します。まずは岡崎様、お願いいたします。
一般社団法人スマートヘルスケア協会 代表理事、東京大学大学院薬学系研究科 医薬政策学講座 特任研究員 岡崎 光洋 氏
岡崎:
プレゼンテーションありがとうございました。
岡崎:
やっぱり見てて、皆さん楽しそうに参加してるってのがいいですね。あと、場所の雰囲気もとても良かった。
ちょっといくつか聞かせていだだきたいんですが、認知症サポーターっていうのは先ほど出てきたように、1年半前からこれまでに2回の育成をしているということですか。
前田:
はい、そうです。やはり認知症に興味がある方たちを養成するっていうことが、地域全体に知らせるための第1歩だと思いましたので、まずはそのことに興味がある方たちを地域住民の方の中から拾い上げました。
そして、その方たちが間違った知識を得るのではなく、正しい知識を持って街の方にお知らせするということを重要と考えているので、そのなかで講演の依頼がありましたら、私どもがこういう話をさせていただいて、さらにサポーターを増やしていけたらというところです。
例えば、認知症の方が家にこもって外に出られない、外に出てお話しをすることができない、ということがないような、そんな環境をつくっていくことが調剤薬局の、ヒロ薬局の役目ではないかと思っております。
岡崎:
なるほど。実際に認知症サポーターになった方々っていうのは、誰がサポーターかっていうこと、あまり強くPRする必要もないとは思うんですが、見える化っていうのは何かされているのでしょうか。
その地域で実際にサポーターとして自分の活動をするにあたって、市の中で何らかの形で「こういう方々がサポーターを取られました」みたいなもの。
前田:
オレンジリングというものがありますので、それと、あとは更に講座を受けてくださった方には、ヒロ薬局、東邦薬品としてステップアップ講座という形で認定証をお渡ししているような形になっています。
岡崎:
やはり日本は日本ですごく認知症も増えてますけれども、他国の例では赤ちゃんと同じように昔に帰っていくだけだから、それは疾患じゃなくて地域の人たちが声掛けて「どちらに行くの」「そっちはお家じゃないよ」って子どもが手を引いて、おばあちゃんを連れて帰るっていうような地域を実際に見に行ったことがあるんです。そこでは病気というふうな感じで街の人たちは思ってないんですね。
そういうのにつながっていく、この地域づくりそのものでやってるんだな、ということですごい感銘を受けました。これからも頑張ってください。
前田:
実際そうなっていけばと思っております。ありがとうございます。
司会:
ありがとうございました。続きましてファーマシストライフ様、お願いいたします。
ファーマシストライフ代表 土屋
土屋:
ファーマシストライフです。ありがとうございます。
土屋:
私も以前、祖母が認知症だったりとか、あと仕事柄、認知症のご家族の方に取材させていただいたりとか、非常に苦しんでる方たちっていうのを目の当たりにしたことがありまして。それを、そういった家族の方だけではなくて、認知症サポーターを自分たちで育てていく、っていうことに取り組んでいる。 本当大変だと思うんですけども、その広がりを見据えた動きっていうのに、本当にまず感銘を受けました。
ちょっとお聞きしたかったのは、皆さんも聞きたいのかなと思ったのが、サポーターの方っていうのは完全ボランティアでされている人でしたね。そういった方々をどうやって探されているのかってこと。
あと、もう一つ印象にあったのが、継続性についてですね。「1回ではなく継続的に」ってことを結構おっしゃられていて。サンプルも利用したりして、自分たちがお金を使うわけじゃなくて、継続するということに非常に力を入れてらっしゃると思うんです。
どうしたら、そういったボランティアの方を見つけられるかってことと、継続するために、そういう方のモチベーションとか、どういう風に工夫されてるのかってお聞きしたいなと思いました。
前田:
まずはヒロ薬局に来てくださっている患者さんの中から、そのことに興味のある方たちを見つけ出すことが一番先決だと思っておりました。
以前ヒロ薬局で健康フェアをやったときに、土曜日の午後3時間だけで160人ほどの参加者が集まりました。健康を考えるっていう、そういうイベントに参加する患者さんたちがいっぱいいたんですね。
古河市内にはヒロ薬局古河店と同じファーマみらいグループの薬局が5店舗ほどありましたので、そこで3カ月ぐらい、お知らせのパンフレットを来局される方々全員に配りました。
ヒロ薬局でやるっていうことをそこでお知らせして、まず第1回のオレンジリングをする、その出前講座を始めました。
やはり5回全部に出席する方はそんなにいないんですが、それでも本当に考えてくださる方は数名いまして。
その方々でサポーターが構成されてるんですけれども、その方たちがヒロ薬局の職員と同じようにして、本当に毎月毎月、同じ時間帯に来てくださって手伝いをしてくれてる感じです。
それと私どもは東邦ホールディングスなので食品も扱っております。それで、管理栄養士さんたちが毎月カフェのときにお手伝いに来てくださいまして。
その度にいろんな食品や、お年寄りに優しい食品があるよっていうことを教えてもらったりしました。
ただサンプルを持ってくるのではなくて、そこからいろいろな工夫をして、それをお菓子にしてみたり。例えばおかゆだったものにあんこをまぶして季節のおはぎにしてみたりとか、そういうふうな工夫をして、皆さんがサンプルだといっても楽しんで食べれるような工夫をさせていただいてますね。
土屋:
ありがとうございます。ボランティアの方については、グループの薬局を含めて、こられた方には必ずチラシとかを渡すぐらいやられてるということですね。素晴らしいと思います。どうもありがとうございました。
前田:
ありがとうございました。
(おわり)
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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