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第2回「みんなで選ぶ 薬局アワード」でオーディエンス賞を受賞した 薬局・なくすりーな って、どんな薬局?
2018年5月に開催された第2回「みんなで選ぶ 薬局アワード」で、見事オーディエンス賞を受賞した薬局・なくすりーな。
全国から創意工夫をしている薬局の取り組みを募集。多くの人たちに薬局は何ができるのかを知ってもらい、薬剤師の仕事の可能性を拡げていくためのイベントのこと
『信頼して相談できる薬局の“見える化”を目指して』というテーマで、患者さんに何かあったときに、病院に行くよりも前に安心して相談してもらえるような、信頼される薬局作りを目指しています。
当日のプレゼンでは「Voicy」や「LINE@」を用いた医療・健康に関する情報の配信や相談受付の取り組みが印象的でしたね。
そんな薬局・なくすりーなの魅力について、プレゼンターであり、薬局長の吉田聡さんにお話を伺いました。
よしだ・さとし 1977年生 神戸学院大学薬学科卒
株式会社LLE代表取締役。薬局・なくすりーな薬局長。延べ30万人の服薬指導に当たる中、その薬が本当に必要なのか疑問を持つ。近年、薬剤師の本質は不必要な薬を引き算すること、という考え方にたどり着いた。患者に寄り添う服薬指導には定評がある。その他、『薬の引き算をする薬剤師』として講演やコラム執筆などでも活躍中。
その他、『心に響くプレゼンテーションデザイナー』として、プレゼンやPowerPointの作り方を伝えるセミナー、個別指導を手がける。NPO法人日本セラピーブリッジでは副理事長としては、医療とセラピーを繋ぐことで、心の病の薬を減らす活動を行っている。
目次
チャレンジし続ける、薬局・なくすりーな
——「なくすりーな」というのは珍しい名前ですね。
吉田:
もともとは平成8年に開局された「つくば調剤薬局総和店」でしたが、平成24年3月から私が引き継ぎ、平成27年4月より今の名前に変更しました。
なくすりーなは、「なくす」「くすり」「いいな」この3つの言葉を掛け合わせて創った言葉です。不必要な薬や、薬への不安がなくなると良いな、そんな想いを込めてこの名前をつけました。
薬局としては、近隣の内科系クリニックに隣接するいわゆる一人薬剤師の門前薬局です。
——薬局なのに「薬をなくす」というのは、意外な発想です。
吉田:
みなさんそう感じるようで、この名前にしてから「薬なくしたいんでしょ?」「薬剤師なのに大丈夫?」と言われるようにはなりました(笑)。
——薬局・なくすりーなでは、さまざまなチャレンジを行っているそうですね。
吉田:
はい。もちろん、失敗もたくさんありますが、常に新しい試みを試している、チャレンジ精神旺盛な薬局です。
昨年第1回の薬局アワードで紹介したケア・カフェ@古河も、旭川で開催されたことをFacebookで知り、すぐに開始しました。
また、古河には高カロリー輸液の混注や麻薬の持続皮下注の調整などを受け入れられる薬局がなかったので、シリンジポンプやクリーンベンチを購入しています。
そんな、なくすりーなの姿勢は少しずつ地元の方に伝わっていて「とりあえず何か困ったら連絡してみよう」と捉えていただけるようになっていると感じています。
「信頼して相談できる薬局の“見える化”を目指して」薬局・なくすりーなの取り組み
——今回、薬局アワードにエントリーされたきっかけは何だったのでしょうか。
吉田:
去年が初めての参加で、今年は2回目でした。
もともと私は「ザイシ」という薬剤師のプレゼンイベントを開いているのですが、そこに薬局アワード主催者の竹中さんがいらっしゃって、薬局アワードの話を教えてくださったことがきっかけです。
それに、私はプレゼンテーションデザイナーとしても活動していて、薬局アワードはそれを活かす、ちょうど良い機会だったというのも理由の1つです。
——薬局アワードに参加して、良かったと感じたことを教えてください。
吉田:
去年とは全く違ったカタチの、いろいろな薬局の取り組みを知ることができた点ですね。
グラム染色やドローンなど、従来の薬局では考えられない前衛的な取り組みをされている薬局が多かったので、薬局においてさまざまなことができる可能性が感じられました。
——薬局・なくすりーなの今年のテーマは「信頼して相談できる薬局の“見える化”を目指して」でしたね。薬局の真のセルフメディケーション支援ということで「心のケア」「食のケア」「情報発信」に関する取り組みをご紹介いただきました。
吉田:
さまざまな困難や課題があり、正直、軌道に乗っているかと言われると「まだ乗りきれていない」と感じることばかりです(笑)。
ただ、一見効果がないと思えても、続けていかなければ真の効果は分からないと考えています。
去年お話した、ケア・カフェ@古河では、開始から3年経ってやっとだいぶ認知され、参加人数が安定してきました。
吉田:
また今回、薬局アワードで紹介したVoicyという音声アプリの利用も、1年の時点ではフォロワー数が100名前後で、あまり認知されていませんでした。
しかし、血圧を話題に話したことがきっかけとなり、フォロワー数は700を超えました。1年半経った現在の累計再生回数は9万5千回を超え、子育て世代のお母さま方から多くの質問を受けるようになっています。
イヤーセラピストによる薬局セラピーは紆余曲折していますが、続けることで耳についての問い合わせが来たり、耳つぼを教えてみたいという人が薬局に来たりもしています。LINE@に関してはまだほとんど変わりない状態ではあります。
しかし、何がきっかけで大きく育つかは分かりません。そのきっかけを掴むまで続けることが一番大事なのかなと思っています。
——ご自身では、どのような点が来場者の方々に評価されたとお考えでしょうか。
吉田:
紹介した取り組みの内容自体は、すごく上手くいったり、高い効果が出ていたりというわけではありません。
それにもかかわらず評価していただけたのは、将来的に患者さんから求められるであろうものを予想し、どのようにアプローチをすれば地域の方々の興味を引き健康に導けるのかを常に考え、チャレンジしていることが伝わったからだと思います。
薬剤師としてのこだわりは、頼まれた仕事は断らないこと
——薬剤師の働き方として、こだわっている部分を教えてください。
吉田:
頼まれた仕事は断らないことです。なんとかできる方法を考えてやり抜く感じでしょうか。
また、自分の薬局でできないとしたら、相手方が困らないようなフォローまではします。
古河の中核病院で1日のオキファスト注の使用量が1750mgの人をどうにかして在宅に帰したいという依頼が来たことがありました。このときは赤字覚悟で受けました。これを断ったら今後、古河市の在宅医療において薬剤師が頼りにされることは絶対になくなるだろうと考えたからです。
その時の自分は麻薬についての知識が乏しかったので、J-HOP(一般社団法人全国薬剤師・在宅療養支援連絡会)や全国にいる在宅医療をやっている薬剤師の先生方に助けてもらいながら行いました。
その患者さんはなんとか最後まで自分の薬局で看取ることが出来ました。
——薬局や薬剤師の今後のあり方について、どのように考えていらっしゃいますか。
吉田:
薬剤師という専門職・専門知識をどのように活かしていくかが問われる時代になっていく、と感じています。
例えば、在宅においてもただ単に薬を届けるだけではなく、薬を飲んだその先にある患者さんの状態を見ていくことが求められてきています。
おそらく、その他日々の業務においてもこの傾向が強まってくると思うので、その為に何をすれば薬剤師が地域及び社会に貢献出来るかを考えることが重要なのではと考えています。
なくすりーなの課題 若い人達に貢献する方法を模索
——薬局・なくすりーながある茨城県古河市については、プレゼンのなかで比較的若い世代の人達が多い地域という風に紹介されていましたが、医療事情はどんな状況なのでしょうか。
吉田:
今の古河市は旧古河市・総和・三和の3つの地域が合併して成っていて、それぞれの地域ごとに少しずつ違う問題を抱えています。
旧古河市は高齢化率が高く、地域包括ケアの整備が急務となっている地域です。
それに比べると、私の薬局がある総和や三和の両地区は、大企業の工場があるためか比較的若い世代の人達が多い地域となっています。
古河市では、ケアマネの気づきを起点にして、薬の問題を薬剤師につなげて解決するプロジェクトが立ち上がるなど、地域包括ケアに関して全国の中でも進めようとしている地域だと感じていますし、そのプロジェクトに私も参加しています。
——そのような地域で薬局を営業するにあたり、何が課題になっていますか。
吉田:
古河市だけに限らず、若い人達の健康を守るということに関しては、なかなかできていないと感じています。
これからの地域を支えるのが若い人達です。こういった世代にも何か薬局として、薬剤師として貢献出来ないかなと考えています。その結果生まれたのが今回薬局アワードで発表させていただいた内容です。
ただ、これだけではまだまだ不十分である事も自覚しています。新しいアイデアがあるわけではないのですが、地域包括ケアに関わることと並行して、これからも若い人達に対しても何らかのアプローチをしたいと思っています。
——最後に、今後の目標をお聞かせください。
吉田:
薬局アワードの取り組みとは関係ないのですが、薬局の自立経営を目指したいと思っています。私が薬局を譲り受けた時点から門前薬局なので、まだ今は、そう言う意味で自立している薬局とは言えないからです。
また、私自身の働き方が正直ブラックなので、これでは長続きできないし、一緒に働く人ができたときも同様の働き方をお願いできません。自分の働き方の改善が必要だと感じています。
地域や多くの人から認知され、役に立つことで薬局・なくすりーな単独で経営していくことができる体制を作り上げたいと思っています。
ファーマシストライフ編集部
(写真提供:株式会社LLE)
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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