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オール薬局『地域の人々の健康的な生活を支えるため、専門スタッフによる、健康情報発信基地』発表者 佐々木拓也さん
今回は「第3回 みんなで選ぶ 薬局アワード」で登壇した、オール薬局(マイライフ株式会社)佐々木拓也さんのプレゼンテーションをご紹介します。
オール薬局 佐々木拓也さんのプレゼンテーション
高齢化率の高いエリアで、すべての患者さまのために
佐々木:
マイライフ株式会社、オール薬局の佐々木と申します。今日は我々の取り組みの一つとして、地域の方々にどんな健康支援が本当に必要かという視点から、新たにこの4月にオープンさせた施設のご紹介をさせていただきます。
佐々木:
我々が薬局を営む広島県呉市は、人口約22万4,000人、高齢化率が34.4%。20万以上の中核都市の中で高齢化の進行率1位になったことがあり、直近の調査では2位という背景がある街です。
かつて戦艦「大和」を建造した軍港があったり、現在では海上自衛隊の基地もあるほか、『この世界の片隅に』という映画の舞台でもあります。
佐々木:
こんな呉市で平成9年にオープンした我々オール薬局は、
「すべての患者さまのために」~新たな創造への挑戦~
これを企業理念として、働く仲間、患者さま、当社に関わる全ての人や地域社会の幸せを追求するというキャッチフレーズで日々の業務に取り組んでおります。
オール薬局のマスコットには、ギリシャ神話で薬の神様といわれているフクロウ(オウル)に、もう2つ意味を込めています。
佐々木:
「オール=ALL」、全ての人。企業理念にもありますように、全ての患者さまや地域の方々のためにという思い。それから、AOL、船を漕ぐ櫂(かい)です。社員全員でこの船を漕いで、この薬局を盛り上げていこうという思いも込めております。
情報発信の基地「オールファーマシータウン」に込めた思い
佐々木:
まず、ご紹介させていただく施設は、オール薬局の「オールファーマシータウン」。これはマンションの広告ではなく薬局です。
佐々木:
1階部分は、コンビニエンスストアのローソンさんと共同で、我々の薬局を営業しております。ここには介護相談事業所も併設しておりますので、コンビニに来て介護相談ができる、といった建物になっています。
コンセプトとして、地域の人々の健康を支えるために、我々は薬局ですので、薬剤師、あるいは登録販売者、専門スタッフによるトータルサポートを市民の皆さんにさせていただく情報発信の基地を目指しております。
弊社の代表が「処方箋がなくても調剤薬局に来ていただくにはどうしたらいいか?」と考え、こういう形で、とにかく敷居を低くして、誰でもアプローチできる健康を考える場にしたいという思いでスタートしました。
佐々木:
この1階のローソンは、ちょうどコンビニとドラッグストアの間くらいの店舗です。医薬品は300品目ほど、介護用関連のものを合わせて800品目くらいの健康関連の商材を置いております。これは一般のコンビニにはない機能です。
2階では、タニタさんとのコラボカフェで、主には野菜を中心としたメニューを提案させていただいています。
佐々木:
これは実際のメニューです。これは1日分の野菜の半分量がこの1食で取れるワンプレートで、これが半分の量なんだと実際に目で見て、経験をしていただく。
あるいは、スムージーならぬカムージーという商品があります。これは、チアシードをはじめとして、こんにゃくゼリーや豆腐などが入った、噛みながら飲むドリンクです。
佐々木:
「噛む」ということは、唾液の分泌を促進して消化を助ける他、血流も上がりますので、脳の活性化、あるいは満腹中枢で満腹感が得られやすいという効果もあります。
これ以外にも野菜をしっかり使って噛むメニューを、コラボカフェではたくさん用意しております。
さらにこのカフェには、実はプロジェクターを設置したスクリーンを置いてあり、カフェがお休みの日には健康情報発信のセミナーを開催しております。
同時に、2階ではフィットネスの取り組みも行っております。シニアさん向けのフィットネスで、主にマシンを使用せず、ここで学んでもらったことがご自宅でも楽しみながら継続できる、そういったプログラムで運営させていただいております。
フィットネスのスペースは、ガラス張りの運動スタジオとしてカフェと同じ2階に設置しています。
健康チェックもできる複合施設
佐々木:
今、我々がチャレンジしている試みの一つに「オールラボ」という、健康チェックができる部屋、管理栄養士を常駐させた専用ルームがあります。運動スタジオと同じ2階です。
佐々木:
このラボには、今は10種類ほどの検査機器や健康チェックができる機器を置いております。
たとえば気軽にカフェに食事に来た、普段あまり健康を意識していない人が「ここに来ればこんな測定ができるのか」というように、気軽に測定をしていただけるような機器を用意しております。
佐々木:
ラボでは、タニタさんの体組成計の他、さまざまな測定機器でデータが取れるようになっております。
タニタさんの体組成計では、一般的な体組成計の数値はもちろん、それぞれの部位ごとの脂肪量、右側の手足それぞれ脂肪量、筋肉量というのも見られます。
たとえば、左右を比較して左の筋肉が弱ければ、左を中心に運動していただくという、といった具体的な提案をこのラボを通じて行うことで、フィットネスと連携をさせていただいております。
測っていただくことで、気付いていただければ変わっていただけるのではないか。このサイクルをうまく回す運営を、ラボでしていきたいと思います。
睡眠の可視化で挑む、ポリファーマシーの問題
佐々木:
このラボでもう一つ、我々が取り組んでいることが睡眠の可視化、睡眠の見える化をしようということです。
睡眠の問題で、たくさんお薬を飲まれていらっしゃる方もいらっしゃいます。しかし果たして本当にそれが適切なのか、そもそも睡眠薬の治療でいいのかがあまり考えられずに、何となく安易に検査なく薬を飲み始められているということが多いのが実情です。
これはポリファーマシーの要因の一つになっているのではないかと考えております。
佐々木:
我々は睡眠の見える化のために、この「眠りSCAN」というセンサーマットを導入しました。
これはベッドならマットレスの下に敷いていただくことで、すぐに睡眠データが取れる機器です。ここで取れたデータを、睡眠の解析という形で、我々は主には呼吸や周期性の体動などを見える化しております。
このように簡単にデータが取れれば、データを基にわれわれの専門スタッフが患者さまに関与することができ、最終的にお薬が減らせたり、睡眠の質が向上されたりします。
佐々木:
簡単に言いますと、このような睡眠データが取れます。
一番上は96歳の方ですが、黄色い部分がベッドに入られたところで、青い部分は寝ているということです。
この方は非常にきれいな睡眠ですが、人によっては三角印がたくさんついています。これは離床、ベッドから起き上がっていなくなっているということを意味します。
これがトイレなのか徘徊されたのか分かりませんけれども、もしトイレであれば、その治療をしなければいくら睡眠薬を飲んでも睡眠の質は良くならないことがわかります。
こういったことを、簡単に外来でもできるような仕組みというのを、このラボを通して行っていきたいと思っています。主な測定結果は、患者さんにお返ししています。
佐々木:
これは実際に取った施設の患者さんの例です。左上のデータはほとんど黄色で、つまり全然眠れていないじゃないかと思われるかもしれませんが、実はこの方はひどい皮膚のかゆみをお持ちです。
お薬は出ているのですが、夜中かゆみで動き回っており、センサーとしては寝ていない状態。であれば薬を変える必要がある、こういったこともこの睡眠データから読み取ることができるのです。
我々はこのオールファーマシータウンを、食事、運動、睡眠それぞれに関与し専門的にサポートすることで、地域の健康寿命の延伸をしていきたいと思っています。
また体験型のプログラムですので、体験していただくことで行動が変わる、地域のハブ拠点として、このラボを運営してまいります。
佐々木:
現在はラボのデータの蓄積というシステム化を図っています。
ここには将来的に、検診データや予約データなどを一元管理してデータベースを構築してまいります。
司会:
残念ながらお時間となってしまったため、発表はここまでとなります。佐々木さん、ありがとうございました。
(拍手)
質疑応答
司会:
それでは、審査員の方々から佐々木さんへコメントを頂戴したいと思います。まず、鈴木信行様、お願いいたします。
患医ねっと 代表 鈴木 信行 氏
鈴木:
佐々木さん、遠方からのご参加とご発表お疲れさまでした。
患者の目線からしても、こういうワンストップでまかなえる場所っていいなと思っています。
その中でお伺いしたいのですが、多種多用な設備が一つの建物の中にあるということは理解した一方で、そこの中で患者さんや地域の住民がうまく周回していく必要があると思うんです。
となると、やはりスタッフのソフト面での教育も必要かなと思うんですが、そういった面ではどのような工夫をされていますか。
佐々木:
今、ラボには基本的に管理栄養士が常駐しています。この管理栄養士は、まだまだ3年目くらいのスタッフが多く、今はいろいろな研修活動をしている最中です。
そこに薬剤師も関わりながら、栄養士から見たデータの見方、薬剤師から見たデータの見方、それぞれを融合するような形で、運用を進めていきたいと思っております。
鈴木:
ありがとうございます。新たな創造への挑戦という理念の下で活躍されているということに、今後も期待しています。
司会:
ありがとうございました。では次に土橋朗様、どうぞお願いします。
東京薬科大学 情報教育研究センター 教授、特定非営利法人 医療福祉クラウド協会 理事 土橋 朗 氏
土橋:
大変興味深く聞かせていただいたんですけど、高齢化が進んでいるというのが、一番最初に言われていたことでしたね。
東京都や神奈川県でも高齢化が進んでいる地域に医療が届いていないという現象が起きていて、そうすると呉市でも、おそらく医療の届いていないところには、ああいう大きな建物を建てるということはできないだろうと思うんです。
そこでどういうポリシーで高齢化に対応していくのかというのが、ちょっと見えていないので、その辺りを聞かせてください。
佐々木:
実は呉市から始まった薬局ですので、今回ご紹介した施設を中心に車で半径30分以内のところに14店舗あります。
今はこの各店舗から患者さんを施設に紹介していただいて、施設をハブにした薬局との連携をスタートさせております。
当初、我々はタニタというネームバリューからして、若い人、特に若い女性が来られることを想像していたのですが、実際にオープンしてから1カ月、シニアからお子さんまで、幅広い年代にこの施設を使っていただけている実感があります。
次のステップとして、その多世代型にどういうふうにこの施設からアプローチをかけていくか、そのスキルも今後考えていく課題だと今は思っております。
土橋:
いわゆる健康サポート薬局という言い方で、さまざまなイベントが開催されている薬局の状況ですけど、イベントから出られないという状況がありまして。
タニタさんなど、さまざまなヘルスケアにかかる機器を販売されている会社さんたちは、「イベントには参加させてもらえるんだけど、買ってくれないのよ」という話がよくありまして。そこを変えていくにはどうしたらいいとお考えですか。
佐々木:
それは非常に難しいお話です。
我々、今までもずっと健康サポート薬局で、健康フェアなどの取り組みをしております。初期は機器もお借りさせていただいたりしていました。
でも今は、全社で年間で200を超えるイベントや講演を開催していると、どうしても必要な機器が重複することがあり、今はラボに置いている機器も別に数台を持っております。
健康サポートのための健康フェアも非常にいいんですけれども、やっぱり健康サポート薬局でフェアをやっても、処方箋を持って来る人しかご参加いただけないんです。
基本的に薬局に来られる人にしか告知をしていませんから、当然、ベースになってしまう。
じゃあ、病気でない地域の方々と調剤薬局はどういう関わりを持っていけるのか。
そういうところをちょっと深く掘り下げて、まずは誰でも気軽に入っていただける施設を作り、来ていただければ「あ、こんなこともできるんだ」という、新たな関わりを今後持ちたいという思いで、この施設をスタートさせました。
ですので、やり始めると、実際に機器は本当に必要になってくると思います。
中途半端な形でやると、お借りしてデモ機でいいということになると思いますけども、我々も真剣にやり始めてやっぱりレンタルではどうにもならないという状況になりましたので、今は全て購入して置いております。
土橋:
ありがとうございました。
司会:
それでは佐々木さん、ありがとうございました。
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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