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まごころ薬局 『地域を繋ぐ、笑顔のコミュニティースペースで健康づくり』 発表者 福田惇さん
今回は「第3回 みんなで選ぶ 薬局アワード」で最優秀賞に輝いた、まごころ薬局(株式会社コーディアル)福田惇さんのプレゼンテーションをご紹介します。
まごころ薬局 福田惇さんのプレゼンテーション
テーマは「つながりで健康になる」
福田:
まごころ薬局の福田と申します。つながりで健康になる薬局というものを理念に掲げて頑張っております。
福田:
まず、簡単に自己紹介から。名前は福田惇と申しまして、年齢33歳、出身は群馬県の伊勢崎市というところです。
前職は製薬会社のMRをやっていまして、そのときに神戸配属の尼崎担当になり、今も尼崎で薬局をやっているという流れでございます。
趣味はドライブ、旅行、雑草ハントということで、薬になったり食べられたりする草を見つけに行くというのが趣味です。
福田:
まごころ薬局の紹介でございますが、兵庫県尼崎市、 兵庫県の一番東側の大阪に面しているところにあります。
尼崎は有名な芸能人ダウンタウンの出身地で、最近ではお城が再建され、そのお城で町おこしをするなど、尼崎市が町をつくるということに対してすごくホットになっているところでございます。
福田:
さて、本題です。
薬局ってどこも一緒じゃないの?ということを(一般社団法人 薬局支援協会の)代表の竹中さんが言われて、この薬局アワードを開催することになったと思うんですけれども、3年前に僕はこれを言われたときに「いや、うちの薬局は違いますよ」とは、お恥ずかしいながら堂々と言えなかったんです。
患者さんに健康を届けて元気になってもらえる薬局を作りたい。でも自分は本当にそんな薬局がつくれているのだろうか?という疑問ともやもやを抱えていたのが3年前です。
ただ、僕がそのもやもやを晴らしていただけたというか、きっかけがございまして。
実はそれが第1回の薬局アワードに出た厚川薬局の厚川先生の発表を、まさにこの会場のその辺で聞いていたときに、これや!と思ったんです。
これだったら俺もできるかもしれない、そういうふうに考えまして、絶対次は俺がここに来るということで3年間温めてきました。
福田:
厚川先生の薬局は、近くに病院が1つもないんです。
その状態で、地域の人が薬局を支えながら、コミュニティースペースを使って健康に寄与することをいろいろされたりとか、自分もすごくやりたいと思ったんです。
でも、こういうことを薬局がする意味はあるの?というふうに思われる方もいるかもしれないんですけれども。
社会性が満たされると、人は元気になる
福田:
そもそも健康とは、ということでWHOは、健康とは病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも精神的にも、そして社会的にも全てが満たされた状態にあると言っています。
福田:
まずこの社会的という部分が満たされないで健康を損なっているというか、同じ薬を飲んでいるのに、元気じゃない人と元気な人がいると思ったんです。
思い起こしてみれば、趣味で陶芸をされていたりとか、ずっと農業をやっているとか、尺八の先生をやっていたりとか、友達がいっぱいいてカラオケによく行くとか、そういう方ってめちゃくちゃ元気だなと。
だからやっぱりその薬局が、そういうところで何か担う部分があると、薬以外でも健康を届けられるんじゃないかなというふうに思いました。
それが確信に変わるエピソードがあったんです。
福田:
この方は実際にうちの患者さんなんですけれど、近くに住んでいまして、心臓と胃と膝のローテーションで毎日薬局に不調を言いにきていたんです。
ただ、その患者さんが急に元気になって目をきらきらさせて薬局に入ってきたので、「どうしたんですか」と聞いたんです。
このおじいさんは90歳なんですけど、起業しようと思うといきなり言ったんです。
「どういうこと?」と聞いたら、おじいさんはもともと銀行員で、資産運用とかをずっとやっていたんです。証券会社に勤めていた娘さんが辞めることになったから、娘と一緒に証券会社をつくろうと思うという。
「いいね、やればいいじゃん」と言ったらすごくきらきらして帰ったんですけども、ちょっとしたらまた元気じゃなくなっちゃったんです。
福田:
「どうしたんですか」と言ったら、「娘に断られた」と言って、まあまあ確かになと思いつつも、でも、もったいない。
だから「じゃあ僕の資産運用のアナリストをやって」と言って、その人にちょっと役割みたいなものを与えて。与えると言うとちょっと上から目線ですけれども作ってあげたら、今はずっと元気なんです。
ちなみに今は言ったとおりにやって負けていますのであれなんですけど(笑)。でもそれでもいいなと思っています。
福田:
だから、やっぱりその地域での役割だったり、やりたいことが見つかるということを、作りたいなと思い、「行きたくなる薬局を作るオープン会議」なるものを始めまして。
薬局の横にちょうど、もともと介護事業所だった居抜き物件の空きテナントがあったんです。そこに人を月1で集めて、最初から、作る前から、どんな場所にしたら面白いかとか、内装はどんながいいかとか、いろいろ会議をしていたんです。
福田:
これはそこの様子なんですけど、本当に多世代です。
子どもからおばあさんまで、いろんな人が関わってくださいまして、総勢4回で80名ぐらいですかね、来てもらいました。
もちろん「来てね」と言っても来ないので、おじいさん、おばあさんが来るお茶飲み会とかゲートボールとかに行きまくって、とにかくいろいろなところで友達を作るという活動からまず始めたんですけれども。
それで来ていただきまして、実際にこれが出たアイデアなんです。
福田:
本当にぶっ飛んだアイデアがめちゃくちゃ出まくって。
これはちょっと上がエンタメ軸、横が公共性みたいな、真面目みたいな感じでやっているんですけれども、ほとんどエンタメで、真面目系はあまりないんです。
だから、やっぱり楽しみたいんだなと思ったんです。
コミュニティスペースで「つながり」を作りながら健康に
福田:
せっかくアイデアを出してくれたので、今までほとんど実施しています。
全部はお伝えできないですが、Facebookで「まごころ茶屋」「まごころ薬局」で検索してくれたら出るので、それを見てください。
そんな感じで、出ていなかったけど写真展とか、足湯も。足湯ってどないやねんと思うんですけどやっています。
福田:
実際にそのコンテンツ以外に、ハード面というか内装を、秘密基地をつくるみたいな感じで自分たちで作ったら面白いと思って、居場所になるなと思ったので、内装を作るのもみんなでやろうということで、イベントにしちゃいました。
福田:
これは床板を作っているんですけど、杉板をあぶるところから始めまして。
それから壁塗りとかもみんなでやって。
福田:
みよしさんというスーパーおじいちゃんと一緒にみんなで内装を作って、ついに出来上がったという感じです。
福田:
せっかく完成したから、オープニングイベントもやってしまえということで、完成したまごころ茶屋のコミュニティースペースを使いつつ、公民館を借りてファッションショーをやりました。
福田:
このイベントのファッションショーは、どんな人でも、障害があっても、車椅子の方でも、誰でも出られて、誰でも主役になれます、主体的になれますよということで、開催させていただきました。
他にも大人から子どもまで楽しめるコンテンツをいろいろ入れていました。
福田:
これはファッションショーの様子です。左上のおじいさん、おばあさんは、1年前くらいに在宅で入ったときは、もう本当に死にかけだったんです(笑)。
本当にもう、もう明日逝ってもおかしくないような状態だったんですけども、在宅で関わりながら少しずつ元気になって、ファッションショーに出てくれない?と言ったら、出てくれると言ったんです。
それで、ジェームズボンドが好き言うたんで、ジェームズボンドとボンドガールで、これを持っているわけです(笑)。
参加してくれた人がみんな楽しんでくれました。本当にありがとうと言われたんで、良かったなと思ったんですけど、こんな感じでみんな一緒に主役になってもらうという形で、このおじいさんとかもめっちゃかっこいいなと思って。
ファッションショーとオープニング、まごごろ茶屋など、いろんなコンテンツがあったんですけれども、総勢100人くらいが今まで関わってくれているんです。
福田:
陸の孤島みたいなところにある薬局なんですけれども、オープニングイベントに200人以上が来てくれまして、盛大に終わることができました。
ただ、オープニングイベントに人が来たからって良いというわけではないと思うんですけど、すごくうれしかったことがございまして。
福田:
オープニングイベントで僕が、誰かに何かやってみるとか、友達を作るとかのほうが健康になりますよという話をさせてもらったときに、このおばあちゃんが「私は掃除の仕事をしているから、掃除をさせて役に立たせてくれない?」と、あっちから言ってきてくれたんです。
今は週に1回、ただでなんですけども、掃除に来てくれているんです。それが本当にうれしくて、思いが伝わって良かったなと思っています。
福田:
普段は、毎日10時からまだ1時なんですけれども、誰かに会いに来られますよという場所を解放しつつ、週に1回から2回はイベントをしているというような状況です。
とはいえ薬局でやっておりますので、やっぱりまずは中心には薬局がなきゃいけないと思うんです。
福田:
この服薬指導を通して、患者さんの生活の背景だったりとか、あとは何が好きとか得意とか、そういうのもいっぱい聞き出してきてストックを作っておいて、小さな事でも良いので、まごころ茶屋でワークショップや勉強会を開催してもらえればと思っています。
また新しい居場所、いろんな多世代で交流できる場所として機能したり、あとは好きなことが見つかる場所、あとはこういういろいろな専門職のイベントで新しい発見をしてもらう。
服薬指導を中心として、コミュニティースペースでつながりを作りながら健康になっていきましょうねということを目指しております。
以上です。ありがとうございました。
(拍手)
質疑応答
司会:
それでは、審査員の方々から福田さんにコメントを頂戴したいと思います。まず、辰巳明久様、お願いいたします。
京都市立芸術大学 美術学部、大学院美術研究科 ビジュアルデザイン研究室 教授 辰巳 明久 氏
辰巳:
ご発表を興味深く拝聴しました。ありがとうございました。非常に社会的意義のあることをされていると思いまして、まず感動的だったのは、まず地域に入っていかれると。
発表も大変お元気でしたけども、そのパワーでまず入っていって、その結果、人が来るというこのやり方というのは、大変素晴らしいなと思った次第です。
また、実際に非常に生き生きと参加された方々が、まさにお元気になっていかれているという、それは本当に大きな効果だということで、本当に感動的なことだなと思った次第です。
そこで、質問がちょっと1つ2つございまして。1つは小さなイベントといいますか、エンタメ系がすごく多かったんですけども、ほとんどやっておられると。
ただ、それなりに多額ではないにしても、経費がかかるんじゃないかと思うんですけども、この辺りはどのようにされているのかなというのが、まず1つです。
それから2つ目は、服薬指導とかもされていて、これもすごく意義深いことだなと思うんですけれども、質問としては、そのコミュニティーを作った結果、やはり来局される方が増えたかどうか、それは処方箋を持ってこられるとか、OTCを買われるとか、そういうことなんですけど、これが2つ目の質問でございます。
福田:
まず2つ目の質問からお答えさせていただきますと、増えました。というのは、もう100人以上が関わってくださっているので、言ったらもう半分身内みたいな感じなんです。
あと、これは本当に言われたんですけれども、私自身が暴走しがちでいろいろなことをやり過ぎると、「人のためにやりたいんや!」と言っても、いろいろやる結果、「あいつに任せていたら破綻するぞ」となって、だからいろんな人が支えてくれていると言われたんです。
本当にそうだなと思って。いわゆる増えてはいるんですけど、だから僕の隙だらけなところを補完してくれるような形で、患者さんも来局してくれているというのもすごくあります。
あと、経費の部分は、これはきれいごとと、あとは現実面があるんですけども。
まずきれいごとで言うならば、僕はやっぱり薬局の価値というか僕自身が働けて、こんなことをやっているし、健康になっているしという風に思いたいので、あまりそこのお金に関する部分で言えば、いいのかなと思っています。
ほぼ、皆ボランティアで関わってくださっているので、本当にありがたいことに、家賃以上にかからないような感じにはなっているんです。なので、そこはある意味でOKだなと思って。
あともう1つの部分の現実面で言うと、こんなに楽しいことをしているんだから、薬局を使ってねということで、とんとんになればいいかなという風に思っています。
辰巳:
ありがとうございました。
司会:
では、続きましてファーマシストライフ様、お願いいたします。
ファーマシストライフ 代表
土屋:
楽しいプレゼンをありがとうございます。本当に自分の資産を削ってでも、患者さんの健康を上げていくような、その取り組みにすごく感銘を受けました。
こういうファンベースだったり、コミュニティーという、最近でいうとオンラインサロンだったり、そういう患者さんを”共犯者”にしていくような取り組みというものをリアルでやられているというのは、大変素晴らしいことだなと思いました。
そこで私がちょっとお聞きしたいこととしては、まずこういうのを皆さんがやろうと思ったときに、その最初の共犯者だったり、最初に一緒に何かやってくれる人たちを集めることが、結構難しいんじゃないかなという風に思っていまして。
そういったところで何か工夫されたこととか、こんな風にやってすごく最初はうまく火がついたよとか、そういうのがあったら教えていただければと思います。
福田:
まず、そのファンベースの本は熟読しました。そうですね、仕掛けはあります。
時間の関係で発表は省かせてもらったんですけれども、実はこれも薬局アワード関係で知り合ったんです。
僕は「こんなことをやりたいんです」とずっと言っていたんですけど、やり方が全然分からなかったときに、薬局アワードの作戦会議に来て、東京の病院薬剤師さんと知り合ったことがあって、僕が思いのたけをばーっと言ったんです。
そうしたら、「尼崎にコミュニティーデザインをしている人がいますよ」と言われて、その薬剤師さんがその日につないでくれたんです。
その次の日に実際に会いに行って、「こんなことをやりたいんですわ!」と言ったら、やりましょうとなって。
その人は、言ったら尼崎のコミュニティーの中心にいるような人なんで、まずこの人基点でわっと人が集まってくれるというのがあったんです。
もちろんそれだけだと、やっぱり感度の高いインフルエンサー、尼崎のインフルエンサーみたいな人が集まらないので、そこからはもう自分で本当にどぶ板作戦でやって。
何とか今、まだ始まって2カ月くらいなんですけれども、そんな感じでやらせてもらっています。ありがとうございます。
土屋:
ありがとうございます。チラシを見るだけでも、結構わくわく感が生まれるようなデザインだとか、そういった取り組みは端々に感じたので、本当に「次世代の薬局」という感じを受けました。ありがとうございます。
福田:
ありがとうございます。
司会:
それでは福田さん、発表ありがとうございました。
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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