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【前編】 薬局発・新しい地域コミュニティの作り方とその先にある これからの調剤薬局のあり方

「みんなで選ぶ 薬局アワード」で最優秀賞を受賞した まごころ薬局(株式会社コーディアル) の福田惇さんと、薬局支援協会 代表理事の竹中孝行さんが、これからの薬局・薬剤師をテーマに話し合う特別対談、前編です。

【前編】
第3回「みんなで選ぶ 薬局アワード」最優秀賞が決定!
薬局アワードで最優秀賞を受賞した”まごころ薬局”って、どんな薬局?

 

2017年より行われている、一般社団法人 薬局支援協会主催のイベント「みんなで選ぶ薬局アワード」。第3回目となる2019年が、5月19日 (日)に開催されました。

今年は例年以上に来場希望者が多く、熱気に包まれた会場で、最終候補となった6つの代表薬局がそれぞれ工夫を凝らしてプレゼン。来場者から大きな拍手を浴びていました。

そんな中、最優秀賞を受賞したのは兵庫県尼崎市「まごころ薬局」代表の福田惇さん。

薬局アワードを主催する 一般社団法人薬局支援協会代表理事の竹中孝行さんと、今年の薬局アワードを振り返っていただきます。

対談者プロフィール

福田惇さん ※写真右
ふくだ・じゅん「株式会社コーディアル」代表取締役、薬剤師。1985年、群馬県出身。城西大学薬学部卒。製薬会社でMRを勤めた後、2013年、兵庫県尼崎市に「まごころ薬局」武庫之荘店をオープン。現在、もう1店舗を展開。地域の人々がつながるためのコミュニティ造りにも尽力。コミュニティスペース「まごころ茶屋」を武庫之荘店に併設している。

竹中孝行さん ※写真左
たけなか・たかゆき「株式会社バンブー」代表取締役、一般社団法人薬局支援協会 代表理事、薬剤師。1984年、静岡県出身。共立薬科大学卒。外資系製薬会社に勤務後、独立。薬局事業、岩盤浴やエステなどの美容事業、医療機関向けのECサイト運営などのメディア事業、介護事業、ゆるキャラ事業など、幅広い事業を手がける。

関連記事:まごころ薬局 福田さんの薬局アワード当日のプレゼンはこちら
まごころ薬局 『地域を繋ぐ、笑顔のコミュニティースペースで健康づくり』 発表者 福田惇さん

 

「まごころ薬局」は他の薬局と違う、と
胸を張って言えるようになるまで

竹中

第3回「みんなで選ぶ薬局アワード」最優秀賞受賞、おめでとうございます。

 

福田
ありがとうございます。3回目で早くも出場できただけでなく、最優秀賞に選んでいただけたのは光栄ですし、本当にうれしいです。

 

竹中

前から聞きたかったんですが、どうして1回目のアワードに来てくださったんですか。わざわざ上京してくださって。

 

福田

それは竹中さんから、そうですね、もう5 年くらい会ってなかったのに、突然「これこれこういうアワードをやるから出てくれない?」という電話をもらったからです(笑)。

 

竹中

そうか、僕が誘ったんですね(笑)!

 

福田

でも、1回目のときは、「薬局なんてどこでも一緒でしょう?」という問いかけに、「うちは違います」と胸を張って答えられるだけの薬局づくりはできていませんでした。

それこそ、登壇者の厚川俊明先生(厚川薬局/埼玉県川口市)の発表に刺激されて、薬局と地域コミュニティをつなげるアイデアが浮かんだんです。あのとき見に行ってよかったです。

竹中

まごころ薬局さんに、「まごころ茶屋」というコミュニティスペースが併設されていることにも驚きました。

そこで開催されるイベントも、認知症予防教室のような直球の健康管理から、患者さまや地域の人と一緒に内装をやってみるDIY、高齢者や要介護の方を主役にしたファッションショーなどの変化球まで、バリエーションがあって面白いですね。

すべて地域住民の方の声から生まれているというのもすばらしいです。

 

福田

ちょうど薬局の横にあった、人が集まるような場所としては格好のテナントが空いたので借りることにしました。

もちろんハコを作っただけでは機能しませんから、まずは月イチで集まってもらい、ここをどんな場所にしたら面白いかを膝を突き合わせて考えることから始めました。

 

竹中

それが、誰でも参加できる「行きたくなる薬局を作るオープン会議」ですよね。

でも、「ぜひ来てください」と声をかけただけでは、人は集まらないですよね。ふつう。

どうやって周囲の人たちを説得していったんですか。

 

福田

やはり最初は僕自身が、MR時代のように、会う人会う人に「こんなことがやりたいんです」と営業していった感じですね。

それだけではなく、地域の自治会に入って、自治会の仕事を手伝ったり、ゲートボールに参加したり。地道なドブ板作戦です。

そうこうする中で、縁あって尼崎で積極的にコミュニティデザインをやっている人を紹介してもらえたんですね。その方の力も大きかったです。

 

竹中

とんとん拍子に聞こえますけど、本当はそんなことないですよね?

 

福田

はい。イベントを企画しても、本当に人が来てくれるかなと、怖くて寝られなくなるようなこともありました。

薬局の基本業務以外のことで僕の時間が取られ、スタッフに負担をかけてしまうのがいちばん精神的にキツかったです。

でも無理に説得するのは違う気がしたし、わかってくれる人や「よくわからないけど、面白そうだからやります」と言ってくれた人が残ってくれた。おかげでなんとか形になってきました。

だから、いま「福田さんがやりたかったことが、最近わかってきましたよ」と言ってもらえると、本当に、まごころ茶屋を作ってよかったと思います。

調剤薬局だけが持ちうる強みは何か。
考え抜いた先に浮かんだこと

竹中

まごころ薬局さんが開業されたのは……。

 

福田

2013年3月です。今年で6年目を迎えます。最寄り駅から徒歩20分ほどの住宅街にあるので、利便性では勝負できません。地域の人にどのように愛されるかをスタッフみんなで考え、運営しています。

 

竹中

いま、スタッフさんは何人ですか。

 

福田

薬剤師が僕を含めて5名、それ以外の3名は全員女性です。事務は女性社員が1人と、パートさんが2人。みな30代から50代です。

 

竹中

まごころ薬局さんのホームページを見ると、〈患者様の待ち時間に関するストレスを出来るだけ軽減できるよう努めています〉と謳っていますよね。

 

福田

そのために、調剤監査システムを導入しています。

どこの薬局でも持っている機械ではありませんが、調剤の正確性とスピードを両立させるために有効です。

僕は開業したときから、患者さんに対して「何かしてあげたい」気持ちが強くあったんですが、そのころの僕の至上命題は、とにかく患者さまの負担をなるべく軽くすることでした。

言ったら、患者さんは薬をもらうのに、やはり院内処方の方がラクだと思うんです。薬局まで歩かなくていいわけですし……。

だから、待ち時間を極力減らして、正確に早く薬を渡すシステムを作らなきゃと考えて、ネットで予約してすぐ処方薬を受け取れるサービスとか。そういうところにフォーカスしていたんです。

福田

でも、それはいわば、いかに減点されないようにするかみたいな取り組みだな…と感じて、僕自身が鬱々としてしまったんです。

いまでさえ、調剤部門を併設したドラッグストアは増えているし、健康サポートやOTCの充実ならドラッグストアでええやん、ついでに買い物もできるし。

 

竹中

薬の調剤、処方薬を調合するとかは、機械に任せる薬局も少しずつ増えてきましたね

スピードや利便性だけでいったら、これからますます進化してくるAIやドローンなどのテクノロジーに勝てなくなっていくでしょう。

 

福田

そうなんです。ならば、調剤だけの薬局にどんな付加価値を付ければいいのか。何が強みになるのか。僕もそれを真剣に考えました。

薬局って、いわば処方箋を持っている患者さまの「関所」ですよね。必ずそこを通るし、薬を渡すときには話をする、それを記録に残す。

そのときに患者さまの生活背景や、好きなこと・嫌いなことやってみたいことも、聞こうと思えば聞けます。

そういうコミュニケーションの場としての可能性がアドバンテージだと思ったんですね。

調剤をしていての「あるある」のひとつに、薬を出すときに新しく漢方薬とかが足されていて、聞くとそれが患者さまご自身の要望だったりするんですよね。「友達が効くと言ったのよ」とおっしゃる患者さまがとても多い。

それはどういうことかと言うと、医者より友達のクチコミの方が信用度が高いということです(笑)。患者さまにとって、実はそういうプラセボが結構大事だったりする。

患者さんに親身になって接して、薬のプラセボ効果を高める事も、薬剤師の仕事の一つだと思ったんです。

これからの薬局、薬剤師には、
処方以外の付加価値が求められていくはず

竹中

おそらく福田さんの試みは、いわゆる再現性で言えば難しい部分がありますよね。

今回、特別審査員賞を受賞された、子どもの絵を薬袋に印刷するといった素敵な取り組みはどの薬局でもすぐにはじめられる可能性がありますが、コミュニティ作りは、リーダーのモチベーションや地域性などがとても関わっているので。

福田

そうですね。実際、場所を作るとなれば、金銭的負担の怖さもありますし、人が集まってくれるかという不安とも闘わないといけないとか。1ミリもリスクを取りたくないという堅実すぎる人に話しても、まったく理解されません

 

竹中

「それって儲かるの?」みたいな。

 

福田

そうそう、「点数付かないじゃん」とか。

実は、僕がけっこう参考にしたのは、スナックなんです。誰もがふらりと立ち寄れたり、なじみになったり、スナックみたいな薬局をつくるにはどうしたらいいのかを意識していました。

ライブ配信サービス「SHOWROOM」の前田裕二さんやホリエモンさんなどもよく言っていることですが、「みんなスナックに酒を飲みに行っているわけじゃない、そこにコミュニティーがあって人と話をしたいから通うのだ」と。

だから、儲けようよりも、常に生きながらえられるかと考える。

 

竹中

確かに客がついたスナックはつぶれませんね。

福田

つぶれないけど儲からない(笑)。

たぶん「お金をたくさん儲ける」がモチベーションになっている人からすると、おかしなことをやっているようにしか見えないというのは、自分でやっているからわかります。

でも一つ言えることは、「儲けたいんだったら、薬局じゃない」ということです。

 

竹中

それは、けだし名言ですね(笑)。

実際、福田さんの活動を見て思ったのは、とにかくご本人も楽しそうに運営されているし、それに関わっている人もみんな楽しそう。それに尽きると思います。

たぶん会場のオーディエンスにもそれが伝わって、共感を呼んだことが評価につながったんでしょう。

 

福田

そうだとうれしいですね。ただ、僕のイメージしているコミュニティの在り方の理想は、もう少し先にあります。

いまの到達点はどのくらいだろう……。まだ100の中の10を超えたか超えていないくらいです。

 

>後編 へ続く(8月23日予定)

後編では、これからの薬局や薬剤師には何が求められていくのか、”薬局のあるべき姿”を考えるとともに、 薬局・薬剤師とコミュニティデザインのカンケイについて、議論を深めていきたいと思います。

ファーマシストライフ編集部
(取材・文/三浦天紗子、写真/景山幸一)

みんなで選ぶ 薬局アワードとは? 】
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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