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薬局・なくすりーな 『特許申請中 携帯型医療用医薬品救急箱「ラクスリード」』 発表者 吉田聡さん
今回は「第3回 みんなで選ぶ 薬局アワード」でオーディエンス賞を受賞した、薬局・なくすりーな(株式会社LLE) 吉田聡さんのプレゼンテーションをご紹介します。
薬局・なくすりーな 吉田聡さんのプレゼンテーション
薬局の薬で代用可能でも病院へ行く背景
吉田:
薬局・なくすりーなの吉田聡と申します。
今日は特許申請中 携帯型医療用医薬品救急箱「ラクスリード」についてお話しいたします。どうぞ、よろしくお願いします。
吉田:
まず、薬局・なくすりーなについてお話しします。関東平野のど真ん中、茨城県は古河市にあります。
吉田:
うちの隣は、岡田クリニックさんという内科と消化器外科を標榜している病院さんです。
ここは風邪とか胃腸炎といった急性期の病気だったり、高血圧、糖尿病といった生活習慣病、その他けがによる外傷、こういったものの手術もしてくれる、いわゆる何でも請け負ってくれる病院です。
めちゃくちゃ評判のいい病院なんです。評判はいいんだけど、待ち時間が超・長いんです。
お昼くらいに薬局に来た患者さんが「私は朝9時に来たのに、この時間なのよ」、よくこういう風に言われています。
そんなちょっと待ち時間が長い病院さんの隣にあるのが、うちの薬局・なくすりーなです。
吉田:
うちの薬局でいろんな患者さんとお話ししていると、思うことがあるんです。
この患者さんは病院に行かなくても、薬局にある薬で代用できるよね。そうしたら、病院でわざわざ長い間待たなくても、患者さんはおうちでゆっくり休んでいられるのになと。
実際、胃腸炎であったり、風邪のひき始め、下痢、腹痛とか、そういったものに効く薬は薬局にある薬で代用可能です。
吉田:
とはいえ、やっぱり患者さんは、病院で待ちたくないという思いがあるにもかかわらず、ちょっとした症状でやっぱり病院にはかかってしまいます。
これは、なぜなんだろう。そう思ったときに、いろいろな原因がある中で、1つが薬のイメージなんじゃないかなと思ったんです。
便利さ、効果、安心を兼ね備えた救急箱
吉田:
そこで僕は、配置薬、市販のお薬、病院のお薬と分けて、一般の方々にアンケートを取ったんです。配置薬とは、置き薬です。
そうしたら、41人の方から回答をいただきました。それをざっくりまとめるとこんな感じです。
吉田:
配置薬、置き薬は、つらいときにすぐ手元にあるのはいいんだけど、「高い割には大して効かないんだよ」「使いたいときに欲しい薬というのがあんまりないんだよね」、そんな風に言われました。
じゃあ、市販品はどうかというと、「手軽に買えるのがいい」と。だけど、「こっちもまあまあ効かないよな」それに、「意外と高いし。つらいときにそもそも家から出たくねえんだ」と。そして、「家から出て薬局に行ったはいいけど、薬局で何を買っていいかも分かんないんだよね」という。
じゃあ病院のお薬はどうかというと、「保険が利くから安い」。しかも、「お医者さんが診てくれると安心」、確かに病院に行くのは面倒くさいし、時間はかかるけど病院に行くよね」という風な様子が、アンケートから見て取れました。
図に表すとこんな感じかなと思っています。
吉田:
縦軸に利便性というのを見て、横軸に効果がある・安心感・経済性。こんな横軸は世の中にはないんですけど。
こんな形で見てみると、要は市販の薬、配置薬、市販薬というのは、どうしても高い割には大して効かないし、自分で選ぶのは面倒くさい、そんな感じです。
だったら、時間をかけても、病院に行って安心できるお薬、しかも安いんだからそっちを買いましょう、買いましょうというのはちょっと違うかもしれないけど、そういう意識なんだなということが、このアンケートから分かりました。
ということは、図の右上のオレンジ色の部分です。
使いたいときすぐ手元にあって、しかも効果が保証されていて安心で安ければ、患者さんはそちらに行くんだろうな、という風に考えました。
それが今日お話しする携帯型医療用医薬品救急箱の「ラクスリード」です。
吉田:
ラクスリードはこんな形です。小さい箱に入れているんですけど、これは薬局で零売(れいばい)という形で販売可能な処方箋医薬品以外の医療用医薬品を、携帯できる形に詰め合わせた救急箱なんです。
これを、月額で1,080円で提供できるんじゃないかなと考えています。
まず最初に薬剤師が患者さんにカウンセリングをして、5種の医療用医薬品を選びます。
例えば、私は喉の風邪をよくひくんだよねという人には桔梗湯、頭痛が起こるんだよねという人にはロキソプロフェン、お腹が痛いんだよねという人にはブチルスコポラミン、こういった形で、薬剤師が個々に患者さんに合わせて5つ選びます。
吉田:
そして、調子が悪いと思ったときに、薬剤師に連絡してもらいます。
そのときに、5つお渡しした中で、このお薬を使ったら良くなるよとか、今あるお薬だったら対応できないから病院に行ってね、こういった形のアドバイスをします。
ちなみに、5種類のお薬は、6回分ずつお渡ししています。6回分と言われると、少ないんじゃない?と思うかもしれないですけど、これには2つ意味があります。
1つは薬物乱用を防ぐためです。もう1つは、6回使って大して症状が変わらないときには、もう1回相談してもらうためです。
ただ、それだとやっぱりちょっともったいない部分もあり、患者さんにとっても少ないなと思う部分があるので、1カ月に1回は使ったお薬を薬局に来ていただければ補充するという形を採っています。
これは今年1月から4カ月にわたって、一般の方10名の方にモニターをしていただきました。その結果、10名全員がこれを継続して使ってみたいとおっしゃってくれています。
吉田:
モニターの方々の声なんですけど、私は全然病院に行かないし、調子が悪くないんだから、大丈夫だと思っていたら、急に足が痛くなった。
足が痛いと思ったときに、手元にすぐ使える薬があって良かったと。
その後病院に行ったら、実は痛風発作で今そっちの治療をしていると、言ってくれています。
どうしても喉が痛くて、このまま放っておいたら絶対悪化する、そんなときに使っていただいた方もいます。
その方はあまりにも忙しい方で、この時期に病気で倒れるわけにもいかないし、病院にも行けないし、これのおかげで何とか持ちこたえて、仕事をすることができたというふうに言っていただきました。
他にも、対処できる薬が手元にある、あとは薬剤師が近くにいて相談できるということで、安心感がすごくいいんだよね、というお声を頂いた方もいます。
日本の医療問題にアプローチできる
吉田:
さらに、お薬代に関しても少し安くなると思うんです。
これは風邪のひき始めに病院に行き、葛根湯が処方された場合なんですけど、医療保険を使えば5,460円です。3割負担の方で、自己負担が1,640円。
市販薬を使うと、市販の葛根湯は1,600円程度です。
そして、ラクスリードの場合は1,080円でご提供ができるということで、値段も安くなります。
吉田:
そして何より、病院に行かなくていいということは、患者さんはおうちでゆっくり休めるんです。病院からしたら、病院に来る患者さんが減るということは、待ち時間も減るし、お医者さんの負担が少なくなります。
これは、医療費で考えたら、国の医療費の削減にもつながると私は考えています。
吉田:
こんなふうに、ラクスリードは、この日本の医療問題に対してアプローチできるという風に考えているんです。
実際に医療を取り巻く環境はすごく厳しいと思います。
お医者さんの労働時間はかなり長いというのは聞いていると思いますが、厚生労働省が3月に示した上限の残業基準が1,860時間といわれています。これは、過労死ラインの2倍なんです。
やっぱりお医師さんに代わりがいないので、しょうがないというのはあるのかもしれないですが、ここまでしないと今の日本の医療というのは支えることができていないんです。
吉田:
そして医療費、国民医療費は42兆円です。これはだんだん増えています。
9年連続右肩上がりです。この増え続ける医療費というのは、財政を圧迫していますね。
こういったことにラクスリードは役立つと思っています。
つまり、患者さんにとっては安心して安価なお薬、そして医療のことを相談できる相手が手に入ります。そして、病院にとっては、待ち時間が減ったり、医師の負担が減らせる可能性がある。そして、国にとっては医療費を削減できる可能性がある。
こういった形で「三方良し」、Win-win-winの関係ができるんじゃないかなという形で思っています。
吉田:
時間の関係で、あまり詳しくはお話しできないんですけど、こちらをやるに当たって、まず弁護士さんであるとか、厚生労働省、行政、保健所、こちらのほうにきちんとこれが合法であることは確認しています。
あと、万一これで副作用が起こってしまった場合、救済対象になるのかということもPMDAに確認して、救済対象になると回答していただいています。
そういった意味でも、薬局としても安心して提供できるサービスなんじゃないかなというふうに思っています。
吉田:
最後に、うちの薬局だけでこのラクスリードをやっても、正直大して意味がないと思っているんです。
これは全国の薬局で同じように、連携してやるというのが、一番いい方法だなと思っています。これも薬局であれば、すぐにできることなんです。
何より薬局という立場で、医師の労働時間の問題だったり、国民の医療費の問題、こういった社会的な貢献ができるということが、このラクスリードの一番の強みじゃないかなと思っています。
今日は半分くらい、薬剤師の方や薬局に関わる企業の方がいらっしゃると思うので、よかったら一緒にやりませんか。
ということで、これで締めさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
(拍手)
質疑応答
司会:
それでは、審査員の方々からのコメントを頂戴したいと思います。まずは吉本愛梨様、お願いいたします。
一般社団法人日本薬学生連盟 2018年度代表 吉本 愛梨 氏
吉本:
発表ありがとうございました。薬剤師の職能を最大限に生かせるような、そんな仕組みづくりをされていて、とても感銘を受けました。
私も薬局実習をする中で、「偏頭痛持ちだから、カロナールを使ったのよね」という風におっしゃっている方がいて、「偏頭痛にはカロナールは効かないんですよ」というような会話を何回もしました。
そういう患者さんに対して、薬剤師が介入することで、正しいお薬を常に持っていってもらうということは大切だなと思いました。
その中で2点伺いたいんですけれども、まず1つ目が在庫管理について。特定の患者さんに同じお薬をだったり、1回当たり6回分ずつお渡しする中で、在庫管理の変化が何かありましたら教えていただきたいなと思います。
2点目は、このラクスリードをお使いいただいている中で、医療機関にかかられたりですとか、入院されたりして他のお薬を飲み始めたときに、相互作用のリスク対策に何かされていることがあれば教えてください。
吉田:
ご質問ありがとうございます。
まず在庫管理に関しては、正直何も増えていないというのが現状です。
というのが、もともとうちは内科系なので、風邪のときに使う薬であるとか、頭痛のときに使う薬、そういったものはもともとあるんです。
その中から使っているので、あえて新しく在庫を増やしたとか、そういったことなかったので、科によるかもしれないですね。全ての薬局というと難しいかもしれないですが、そういう形では問題がなかったなと思います。
もう一つ、入院した際などの相互作用に関してです。ちょっと今日はお見せしていなかったんですけど、ラクスリードにどんな薬が入っているかという一覧表が出ています。
万一入院したときに、その表を見せて、何の薬が入っているか、どういうときに飲んでいるかを医師にお伝えいただければ、そのへんのリスクは回避できるかなと考えましたが、いかがでしょうか。
吉本:
ありがとうございます。すごく安全面も考慮されていて、ぜひ私も使いたいなと思いました。
吉田:
ありがとうございます。
司会:
では続きまして鈴木信行様、お願いいたします。
患医ねっと 代表 鈴木 信行 氏
鈴木:
毎年のようにこちらに登壇されていて、毎回違うネタが出てきて楽しいなと思っております。
それについて1つお伺いしたいのが、昨年はいろいろなネットワークを使った、患者さんやお客さんとの連携、VoicyだとかLINE@だとかという仕組みを使っているというお話だったと思うんですけれども、そういうのと、今日発表されたものとが、ちょっと別のような感じがしてしまうんですけれども。そこの連携とか、何か相乗効果みたいなのというのはないのかなということが1点目。
あともう1つが、今回お薬を置くに当たって、家族、同居されている方にも使いたいという要望が出てくると思うんですけど、その点はどういうふうに管理されているのかなというのが2つ目、この2つをお伺いしたいと思います。
吉田:
はい。ありがとうございます。
まず1点目、去年お話ししたのを知らない人がいるので、軽くお話しすると、LINE@などで薬局と患者さんと相互に連絡が取れるということをお伝えしたんです。
これに関してはちょっと連携しています。というのが、やっぱりこれで相談するといっても、一応24時間受ける薬局というのは、どこでもある程度はあると思うんです。
ただ、やっぱり患者さんの中にはなぜLINE@を去年したかというと、電話はしたくないけど相談したいという人が、どちらかというと若い人にはいるんです。そういった人たちのために、LINEだったら相談しやすいというのがあったので、これもLINEで対応していただいたらLINEで返すという形のことをしています。
実際にラクスリードはモニター中なので、まだ4カ月ということもあるんですが、LINEで連絡いただいたら、それで返してということもありました。
吉田:
あともう1点、ご家族について。これは実はモニター期間中に、モニターをしていただいた方からも意見を頂きました。
家族に使いたいんだけど何とかならないか。これに関しては、まだちょっと正直あまり考えていることがないので、家族用という形で大きくするか、個人で管理するかというのは、まだちょっと正直どうしようかなというのを考えているところです。
今後は、でもやっぱり家族対応というのも大事だし、子どもに関してはちょっと難しいかもしれないけど、そのへんのことも考えていければなという風には考えています。
鈴木:
ありがとうございます。期待できる仕組みづくりだと思いますので、ますますのご発展を期待しております。今後ともよろしくお願いします。
吉田:
ありがとうございます。
司会:
それでは吉田さん、発表ありがとうございました。
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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