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まんまる薬局 『スーパーマンはいらない みんなで支える在宅医療』発表者 松岡光洋さん
今回は「第3回 みんなで選ぶ 薬局アワード」で登壇した、まんまる薬局 (株式会社hitotofrom) 松岡光洋さんのプレゼンテーションをご紹介します。
まんまる薬局 さんのプレゼンテーション
薬局として、患者の人生に一歩踏み入れた活動を
松岡:
これから10分間、お付き合いください。よろしくお願いいたします。
松岡:
この場におりますが、私は薬剤師ではありません。小さいときからサッカーに情熱を注いで生きてきました。
小学校、中学校、高校、大学、そしてプロになり、けがで挫折をして、人間としてすごくくさった時期があったんです。そのときに薬局の社長に出会い、調剤薬局の業界に入って8年間、調剤事務を行っておりました。
そして去年退職をし、ゼロから会社を立ち上げ、まんまる薬局を開設いたしました。
松岡:
こちらがまんまる薬局です。
私はサッカーに捧げてきた情熱を、全てこの業界に捧げよう、そういう思いで仕事、ライフワークがもうこちらになっております。
このまんまる薬局は「人から人へ心を届ける」を理念に、薬局に来ることが困難な方や、ご自宅で薬の服用や管理が難しい方、終末期の方、そんな方の人生に一歩踏み入れて活動しています。
松岡:
実際に在宅というのは、1人の患者さまをたくさんの方が支えています。
処方箋を通してだけではなくて、こういった方たち皆さん、患者さんと共に歩んでいく。
松岡:
そして私たちの会社のビジョン、自分らしく生きられる世の中にしたい、この「自分らしく生きられる」の実現の一つとして、実際にご自宅で、慣れ親しんだ我が家で過ごしたいという思いを全力でサポートしている薬局になります。
松岡:
この写真ですが、患者さんは笑っています。耳が全く聞こえないような方ですが、大和ハウスの「コミューン」という機械を使って、すごく聞こえやすいということで、実際に僕らとコミュニケーションを取って笑ってくださったときの様子です。
患者と共にゴールを喜ぶ「ボランチ制度」
松岡:
そんな薬局で、私たちは独自のボランチ制度というものを設けております。
ボランチ制度とは何か。その目的は患者さまのゴールを共に喜ぶことです。
松岡:
実際に患者さまのゴールを共に喜ぶということを実現している取り組みとして、そのボランチ制度のボランチというのは何かということを説明させていただきます。
サッカーを好きな方はいらっしゃいますか。ボランチって日本代表でいうと長谷部誠選手、『心を整える』という本を書いたりした方です。
松岡:
これは僕が撮った写真なんですけど、長谷部選手は不動のボランチと言われていて、日本のトップリーダーと言われているような方です。その方が、実際にどんな位置でポジションとしているかというと、真ん中の位置にいて、攻撃も、守備もできるんですね。
ポルトガル語ではボランチというのは「ハンドル」、フィールドをコントロールするというような意味を持っているポジションです。もちろん長谷部選手だけじゃなくて、いろんな方がこのポジションで活躍しています。
では実際に、まんまる薬局のボランチメンバーというのはどんな人がいるかというところを紹介させていただきます。
松岡:
一番左上の三澤は、駒沢大学サッカー部主将、そしてドイツへの留学経験があり、3年間サッカーで飯を食っていました。
そして佐々木は、青森県出身で、サッカー観戦が大好きな女性です。実際に患者さまの自宅を訪問しているとき、亡くなられた後のご家族のケアはどうしたらいいんだろうということで、グリーフケアの資格を取りました。
左下の竹下は、美術の教諭免許を持っていて、実際に自作のお薬カレンダーであったりお薬手帳などを作るというような提案をしたりしています。
鬼頭は、近畿大学医学部を卒業していて、かなり医学知識の高いボランチになっております。
松岡:
こういった地域のイベントにも取り組んでいるんですが、実際、在宅というのは重いものを持っていくというようなことがあるんです。
松岡:
そういったときに、筋力のあるボランチが輸液だったり重いものを運んだりといったことで、今は在宅でも病院と同じような治療を受けられるようになっています。
松岡:
私自身も、ボランチとして薬剤師に一緒についていって、何をしているかというところの写真です。
両足が不自由な方が、水を流すとどんどんあふれてくるので排水口に詰まっているものを取ってほしいということで、実際に8,000円払って業者を呼んで取ろうかなと悩んでいたので、私が「じゃあちょっと挑戦しよう」ということでやってみました。
こんなことを話していると、ボランチというのは、実際にはただアシスタントとか、便利屋と一緒なんじゃないかと思う方もいらっしゃるんじゃないかなと思うんですが、そうじゃないです。
松岡:
実際にボランチというのは、ポジション、自分に役割があるというところになります。共にフィールドでプレーヤーとして戦っているんです。
ボランチの同行で薬剤師はもっと輝ける
松岡:
なぜ、このボランチ制度を、実際にやろうと思ったのかというと、きっかけがありました。
5年前に、前の薬局に勤めていた女性が、1人で在宅に行って、大泣きして帰ってきたという出来事がありました。
松岡:
「どうしたん?」と聞いたら、患者さんのご自宅で罵倒された、もう一つは、暗い夜道で、道が分からなかったというのもあったみたいです。
実際にそういったものを見たときに、僕は何もできなかったという、すごく悔しい思いをしたのを覚えています。
在宅というのは、きっとそういったすごいハードルがあるんです。そのハードルを少しでも下げようというところで、薬剤師の在宅訪問に同行するようにしました。
そうすると、精神的に安定を得られたのか、実際にその薬剤師さんはどんどん輝いていったんです。
松岡:
女性の薬剤師が泣くような経験をして帰ってきて、誰のサポートもないまま「私はもう在宅をしたくない」、そういう風になったら、実際にそれだけ在宅をしたくないという印象が、どんどん増えていくんです。「在宅は嫌な仕事」という印象だけが残ってしまう。
でも、そうではないんです。実際にはボランチがいれば、女性薬剤師だって在宅で活躍できる、そういったことは可能なんです。
松岡:
こうしたことをきっかけに、女性の薬剤師を独居の男性の家に行かせるのは、あり得ないなという風に思うようになりました。これは、あくまでも私の考えです。
女性の薬剤師もボランチも、在宅という場にどんどん入っていくというところで、少しでも安心して患者さまのご自宅へ行く、その中で薬剤師が輝けるという場所を作っていきたいと思っています。
そして「アウェイからホーム」。患者さま自身はもちろん、働く側の薬剤師もボランチも、ここで一緒に戦っていこうということです。
司会:
松岡さん… 残念ながらお時間ですので、ここまでとさせていただきます。
ご発表ありがとうございました。
質疑応答
司会:
それでは、審査員の方々からのコメントを頂戴したいと思います。まず、土橋朗様、お願いいたします。
東京薬科大学 情報教育研究センター 教授、特定非営利法人 医療福祉クラウド協会 理事 土橋 朗 氏
土橋:
とても熱い講演だったんですけど、在宅療養に関わる薬剤師を支えるボランチというのを聞かせてもらって、確かにそういうことがあるなと思って聞かせていただいたので、大変感銘を受けました。
確かにきれいとはいえない在宅の現場、そこで患者と家族のQOLを改善するのが薬剤師の仕事という、その薬剤師を支えてくれるボランチというようなことでお話を聞かせてもらったんですけど、実際に在宅に出向いている薬剤師の職能というのは、松岡さんから見るとどんなふうに評価されるのかというのを聞かせていただけますか。
松岡:
ご質問ありがとうございます。
実際に私から見ていて、これまで在宅の現場では、介護のヘルパーさんや訪問看護さんがいるから、薬のことはもう大丈夫だから、というようなところも実際にあったんです。
ただ、薬剤師さんが入ることによって、その薬の管理を全て任せることができるというところに、まず安心感があるというような声を頂いたりします。
そして専門的な部分で薬剤師が活躍できる場所、それは実際には患者さまが、ご自宅でお薬を飲んでいるか飲んでいないかというところを、見ることができるんです。
それを見たときに、この錠剤が本当に合っているか合っていないかというところの提案なども、医師に直接言ったりとか、そういった部分が役割としてはあるなというのは思っております。
土橋:
ありがとうございました。
司会:
それでは、続きまして富野浩充様、お願いします。
漫画「アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり」医療原案 富野 浩充 氏
富野:
私も薬剤師として普段働いているですけど、こんなトップがいる薬局は働きやすいし、働きたきたいなと感じる発表でした。
そして、ボランチという名付けがすごくうまいなと思って。薬剤師として普段働いていて、やっぱり助手さんはどこでも大抵いるんですけど、「そこは薬剤師の仕事だから、私たちは助手だから」みたいな、なんかちょっと意識が違うところもあるんです。
その辺の意識付けとか意識向上みたいなところで、何か薬剤師以外の、ボランチの人たちにやっていること、教育とか何かあったら教えていただきたいです。
松岡:
ありがとうございます。
ボランチ制度の目的は「患者さまと共にゴールを喜ぶ」なんですね。ですからボランチも患者さんの求めているゴールを考えて、薬剤師とはまた違ったいろんな視点を教育して伝えるようにはしています。
私が考えるボランチ制度というものでは、患者さまの心をサッカーボールととらえています。大事なのは実際にそのボールをゴールに連れて行くことです。
ゴールとは患者さんの求めているゴールです。そこまで、どういうふうにつなぐのか。
患者さんのゴールが、例えば「外に出て歩けるようになって桜を見たい」であれば、実際に薬剤師や医師が、というよりは思いを叶えるために理学療法士の方にパスを出して、例えば「リハビリをやってもらおうか」とか。
そういった部分では、薬剤師以外の方も、いろんな視点で意見を言えたりするんです。
富野:
ありがとう。ボランチもたまにもシュートすることがあるとは思うんですけれど、そういう意識付けとかはしている?
松岡:
そうですね。私自身もそういった意味では、今はそのチャレンジしているというところでもあります。
でも、ただのアシスタントだったり、ただのサポーターじゃなくて、一緒に戦っていく、共に戦っていくメンバーなんだよというところの意識付けというところは、非常に重要なんじゃないかなというふうに思っています。
富野:
ありがとうございました。ちなみに薬剤師って、どのへんのポジションだと思っていらっしゃる?(笑)
松岡:
薬剤師は守備なんじゃないかなというふうに考えるのも一つなんですが、時にはフォワードになるときがあるなというのも感じています。
在宅というところで、ちょっと言うと、ドクターも一緒にそのフィールドで戦っているメンバーであってほしいですし、そのパスを丁寧につなぐ心、ボールである患者さんの心をどういう風につなごうかということで一緒にゴールを目指してもらいたいんです。
プロの世界ではボールに意思があると言っているくらいなので、そのボールという患者さんの思いの部分でも、ちゃんとゴールにつないでくれる人に預けたいという気持ちだったりとかはあると思うので。
そういった部分で、薬剤師は守るだけじゃなくて、ボールをつなぐために、時には攻めることもあるんじゃないかなというふうに思います。
富野:
ありがとうございます。一緒にフィールドに立つという考え方はすごく素敵なことだなと思いました。
松岡:
ありがとうございました。
司会:
それでは松岡さん、発表をありがとうございました。
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
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