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第2回 日本と何が違う?海外の薬剤師事情

前回は、日本の薬剤師事情をお伝えしました。今回は海外の薬剤師事情について、海外では薬剤師はどのような扱いを受け、どのくらいのお給料を貰っているのかを杉林博士にお伺いします。

――アメリカの職業調査では、薬剤師はもっとも信頼される職業の1位になっていますね。

杉林:医師よりも人気で給料が高いのはフランスとアメリカのカリフォルニアですね。フランスは薬学部に入ったら全員が国費ですから。その代わり9年も10年も勉強しなくてはなりません。当然、医師よりも給料は高く、職業としてもっとも素晴らしいのが薬剤師、一番信用できるのが薬剤師という位置づけです。

――日本では弁護士、税理士などのほうが薬剤師より「上」という扱いをされていますが・・・。

杉林:例えば日本の薬学の先生がヨーロッパに行って「あなたの職業は何ですか?」と聞かれて、何て答えると思います?

――えっ? 薬剤師とは答えないってことですか?

杉林:ええ、「大学の教員です」と答える人がほとんどですよ。「資格は何ですか?」と聞かれても、「ファーマシスト(薬剤師)」とは絶対に言わない(笑)。

――それは、薬剤師という職業に誇りを持っていないということなのでしょうか?

杉林:そうなんですね。でもヨーロッパに行って薬剤師の資格があるのに「私はファーマシストです」と言わなければ、「なぜ?」「あなたは何者?」という目で見られてしまいます。フランスではソルボンヌ大学に行くより薬剤師になるほうが難しいんですから。それを堂々と名乗らないのは変ですよね。もしも日本の女性がフランスに行くとすると、薬剤師という資格を持っているだけでソルボンヌ大学の人から求婚されるくらいですよ(笑)。彼等は薬剤師に対し、エリート中のエリートだと思っていますからね。

――日本とは大違いですね。東南アジアではどうなんでしょう?

杉林:マレーシアでは、高校の成績が上位15%に入っていなければ薬学部に入ることができません。つまり、薬学に入ること自体がエリートということ。もちろん、年収も高校の先生の3~4倍ですから、お給料面でもエリートですよね。

杉林博士の話を聞くだけでも、アメリカ、ヨーロッパだけでなく多くの国で、薬剤師は高いステータスがあり、それ相応の年収を手にしていることが分かる。

アメリカの薬剤師の平均年収は1,000万円強。約1,300万円の歯科医師よりは低いものの、約600~650万円の看護師や理学療法士とはかなりの差がある。しかもアメリカの場合、新卒の薬剤師であっても1,000万円の年収になるという。

ただし、アメリカでは全50州で免許の更新制度があり、更新時には生涯教育単位の取得が義務付けられているため、薬剤師になっても学びを怠れば更新できないシステムだ。なので、安易に給料が高いという点だけでは比べられない。日本と海外の薬剤師の意識の違いが、年収やステータスに反映している点は否めないだろう。

[ 取材・文: 川端真弓(ライター) ]

>第3回 このままでは危うい!?グローバル化できない日本の薬学界 に続く

杉林堅次(すぎばやしけんじ)
薬学博士/城西大学薬学部長/公益社団法人日本薬剤学会長。1951年滋賀県生まれ。’74年富山大学薬学部卒、’76年同大学院薬学研究科修了。 同年、城西大学薬学部助手。講師、助教授を経て’98年教授。 この間、’82,’83年ミシガン 大学、ユタ大学留学。日本香粧品学会および日本動物実験代替法学会理事、日本香粧品学会誌編集委員長。 2英文誌のeditorial board。著書「化粧品・医薬品の経皮吸収」監訳(フレグランスジャーナル社)、「化粧品科学ガイド」(フレグランスジャーナル社)、次世代経皮吸収型製剤の開発と応用(シーエムシー出版)、「生物薬剤学」(エルゼビア)他。
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都内の調剤薬局に勤務中。

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