- 働き方研究所TOP >
- みんなで選ぶ 薬局アワード【公式レポート】 >
- ヒルマ薬局 ドリームマップの作り方と薬局アワード後の変化【比留間 康二郎先生】
ヒルマ薬局 ドリームマップの作り方と薬局アワード後の変化【比留間 康二郎先生】
薬局勤務を始めとした様々な職種の薬剤師、薬局経営者、医療関係者の方々が集まった「みんなで選ぶ 薬局アワード作戦会議 〜みんなDE勉強会ver.1.0~」。すぐにできる薬局の工夫について、前回はゲスト講師、3☆ファーマシスト講師 野村洋介先生の講演レポートをご紹介しました。
今回は、もう一人のゲスト講師、第1回「みんなで選ぶ 薬局アワード」最優秀賞を受賞したヒルマ薬局 小豆沢店 比留間康二郎先生による特別講座
「ヒルマ薬局の取り組み&薬局アワードに参加して」の一部をご紹介します。
ひるま・こうじろう 有限会社ヒルマ薬局 取締役、NPO法人ポジティブフロムジャパン 理事、東京薬科大学 非常勤講師。1980年生まれ、東京都出身。東京薬科大学卒。東京・池袋で4代続く歴史をもつヒルマ薬局。約20年前に東京・板橋に開局した小豆沢店は、保険調剤や医薬品の販売、健康相談や在宅介護支援などを通して、地域医療のために貢献している。第1回みんなで選ぶ薬局アワードにて最優秀賞を受賞。
※ 比留間 康二郎先生のドリームマップ研修に興味のある方はヒルマ薬局小豆沢店にお問合せください
最優秀賞ヒルマ薬局小豆沢店の取り組みを振り返って
比留間:
私自身、今年の4月に薬局アワード第1回に参加させていただきまして、皆さんの投票ということで、最優秀賞に選んでいただきました。
そのとき発表した内容が、ドリームマップというものでした。夢というツールを使って患者さん、従業員にどういうふうに取り組みをしてきたかっていうような内容で、話させていただきました。
ヒルマ薬局 小豆沢店について
比留間:
まず私の薬局なんですけれども創業から94年続いています。自分で4代目でして、現在も薬剤師として働いています。
薬局事業のほかに介護事業もやっているので、介護のスタッフ、店舗のスタッフ、薬剤師もいっぱいいるんですけれども、こういったスタッフで一生懸命頑張っています。
ヒルマ薬局の大きな目玉と言ったらなんですが、今年93歳になるうちのおばあちゃんがいるんです。
うちの看板娘でして、東京薬専を卒業し今も現役で月曜から土曜まで、朝8時半から夜7時半までのフルタイムで働いております。
毎日、家に帰ってきて、缶ビール1杯飲んで寝るというのが日課になっていて、私は、このおばあちゃんからいろんなことを教わって、薬局を4代目として継いでこれるようになった。
まだ駆け出しですけれども、そういう思いがいっぱい詰まった薬局の中で、4代目として奮闘中です。
私自身、いろいろな方と出会って、起業される方、よく0から1をつくり出すっていう方の、そのエネルギーというものを間近で感じて、本当にすごいなっていつも思っています。
その0から1をつくる方とはまた違う立場で、自分はどちらかというと、3代目から4代目を引き継ぎ、継続する難しさっていうものを、すごく感じています。
家族経営なので、そういったところで甘さが出たりとか、見落としてる部分っていうのもたくさんあると思うんです。
そんな中でも、先ほどの野村先生の講演にあったように、患者さんとの信頼関係、エンパワーメントというものを使いながら、自分たちの薬局で何ができるか、何をしていったら、患者さんとのコミュニケーションを取っていけるかっていうことを、日々スタッフと一緒に考えながら行動しています。
ドリームマップの作り方
比留間:
その中で私がであったものが、ドリームマップというものです。
どういったものかというと…
比留間:
こういうものです。
このドリームマップで、自分の夢や、やりたいことをビジョン化します。
他にも”宝地図”とか、いろんな名称があると思うんですが、その中でも私はこのドリームマップというものをパートの方から教えていただいたんですね。
薬局経営をしていく中で、何をしたらいいんだろう、どうしたらもっとうちの薬局よくなるのかなってすごく悩んでいた時期に、たまたま紹介でうちに来てくださったパートの方が「こういったツールがあるんですけれども、薬局で活用してみませんか」と提案してくれたんです。
いきなりスタッフに始めてもらうのも難しいかなと思ったので、まず自分自身が、自分の夢って何なのだろうかということを知るために作ってみました。
最初につくったときは書くことがなくて、何をしたらいいだろうかなってすごく迷ったりとかもしました。
ドリームマップの視点っていうのがありまして、このボードを4つに分けることができます。
比留間:
このボードの左下の自分が自己実現したい物・事。たとえば私だったら、ここに書いたのは『徹子の部屋』に出演したよとか、あと犬を飼ったよとかです。そういった自分が自己実現したいものをこの枠の中に収めて書いていきます。
右下には自分の自己実現した時の心ということで、この夢が叶ったときに、どんな心の持ちようになっているかっていう写真を貼ります。例えば自分の場合だったら、コミュニケーションのスキルを一生懸命学んだりとかして、ノンバイオレンスコミュニケーションのプロの資格を取るっていうようなことを書いたりしています。
右上には、他者に対してどうあるか。私は、自分の使命に生き、自身がその強みとする武器で生き抜くスタッフをつくるということを掲げていて、他者に対してどう関わっていくかっていうことを書いています。
最後の左上には、もうちょっと広い目で見て、世界や社会に対して、自分がどうあるべきか。どういうことをしていくことが社会貢献というものにつながっていくか、ということを考えながら書きます。
これら4つの視点でドリームマップというのを作っています。
ドリームマップがもたらしてくれたこと
比留間:
なぜ夢を実現する上で、この4つが必要かというと、たとえば、すごく物欲が高い方がいて、その人が手に入れたいものとか欲しいものだけがマップのほとんどを占めていたりすると、他の部分に全然目がいかなくなってしまう。
そうすると、要は、自己欲求が強くなってしまって、利他の精神っていうのがなくなってしまう。
ドリームマップがすばらしいなと思ったのは、自分の夢が叶うことによって、他人が幸せになれるっていうことを必ず考えている。こういったものに出会えたっていうことがすごくうれしいなと思いました。
そのうれしいと思った気持ちを、自分だけではなく、今度スタッフみんなにも書いてもらおうと思って、これをヒルマ薬局の研修の一環としてドリームマップをみんなにつくってもらいました。
私自身、どこか大きな薬局に行って主任とか課長とかになってきたわけではなく、もともとは病院薬剤師として病院勤務をしていました。その後、うちのおばあちゃんの体調がちょっとすぐれなくって、すぐ薬局に戻ったっていう感じだったので上司になって部下に対して何かをしてきたっていう経験もなく、逆に上司に何かをされてきたっていう経験もなかった。
だから、どうしたらいいのかなって考えたときに、まず相手のことを知るという関わり方っていうのはすごく大事だなって感じたので、スタッフにもドリームマップをつくってもらおうと思いました。
みんなの夢を知っていく中で、あの人こんなことを思ってたんだ、とか、この人にこんな夢があったんだっていう、本当にいろいろな気付きがあって、そこから職員とのコミュニケーションを取りやすくなったなってすごく感じています。
薬局のドリームマップを作成
比留間:
こうしてスタッフの夢を考えてった後、次に考えたのが、じゃあこれを自分の店舗に置いて考えてみようということでした。
この4つの枠をちょっと違った視点でスタッフみんなに考えてもらいました。
さきほどのドリームマップを、薬局に置き換えると…
比留間:
こんな感じです。
新商品をつくるってなったときに、どんな商品がつくれるかな、新サービスをするとなったら、どんなサービスをお客様に提供できるかなっていうことを考えてもらう枠。
自分たちの理想の会社ってどうなんだろう。例えば、勤務時間がこの時間からこの時間まで、給与はこれぐらい欲しいとか、休憩室とか職場の環境、こんなふうなお店の中で働きたいなっていうようなことをこの枠の中で考えてもらいました。
右上の枠に関しては、お客さまとか取引先への貢献ということで、自分たちはどんなことができるだろうかっていうことを考えてもらいました。
最後に、左上の枠は先程と一緒になるんですが、今度は自分たちの会社から、世界や社会へどんな貢献ができるかっていうことを一つ一つかみ砕きながら、みんなで、こっちの写真じゃないよ、あっちの写真のほうがいいよ、っていうような形で選びながらつくっていってもらいました。
そのときに完成したドリームマップは、今日この会場には持ってこれなかったんですけれども、そこで考えた自分たちの薬局の夢がどんどん叶っていった、っていう現状があります。
みんなで薬局の夢を考えてみた結果
比留間:
実際、薬局アワードの中で紹介した話ですが、例えば休憩室。
うちすごく狭くって、お昼を食べたり、そこで着替えたり、誰かが通るたびに人が立たないと通れないぐらい狭い休憩室だったんです。そこを「広い休憩室で休めるところが欲しい」って書いてもらったことによって、休憩室を広くすることができたり。
「効率よくするために新しい分包機を使いたい」っていう方がいたりとか、「最新の器具を使いたい」っていう人が、夢を掲げてくれた人がいたときには、その夢を貼ってくれたことによって、「じゃあこっちの機械のほうがいいんじゃないですか」っていう提案をしてくれるような社員が出てきたりもしました。
あとはお客さまに対しても、もっと自分たちができるサービスって何だろうっていうことをすごく考えて、あいさつをしっかりしよう、本当に基本的なことかもしれないけれども、そういった基本的なことを毎日積み重ねでやっていけるっていう状況が、ドリームマップっていうものをつくったことによって、みんなが同じ目標を掲げながら仕事をしていくことができるようになったんだなと思っています。
さらには、お客さまだけでなく、地域社会や世界に対してもどういった貢献ができるか。
普通の社員だったら、なかなかここまで考えきれなくって、自分の給料がなんでもっと上がんないんだっていうような愚痴が出てきたりとかするかもしれないんですが、じゃあその給料を上げるためには何ができるかっていう、次のステップをきちんと考えていけるっていうことが、すごく大きな発展だったなと思っています。
薬局アワード当日、皆さん多分いろんな薬局の話を聞かれて、その中でもドリームマップってやりやすいのかな、なんか自分の中でももしかしたらできるかもって思ってくださった方がたくさんいたと思うんです。
薬局アワード後の変化
比留間:
私自身この薬局アワードに参加して、すごく変わったことがあります。
それは何かというと、出場された薬局のよい取組みを自分の薬局にも上手く利用させてもらおう!ということでした。
他の薬局の良い取り組みを自分の薬局で応用
比留間:
ある先生は、薬局をハブにするっていうことで、いろんなところとの連携をとりながら、薬局というものをうまく活用してもらっていました。
また、別の先生は地域でケアカフェをつくって、医療従事者の方たちを集めた会議をつくっていました。
他には、患者さん自身がコーヒーが大好きで、薬局でコーヒーの講演会をやっちゃえっていってやっている先生がいたりとか。
地域に食というものを届けるために、食を提供したり、在宅支援をしながら、地域に密着したかかりつけ薬局というものを目指して頑張っている先生もいました。
そんな中、私がこの先生たちの講演を聞いて、自分の薬局でできることって何だろうってすごく考えたときに、まずは「そういえばうちの患者さんにもコーヒーじゃないけれど、もしかしたら何かの先生っているかもしんない!」って考えて行動し始めました。
すると、実はうちの患者さんにも”デコパージュ”といって、例えばスマホケースとかに自分でデザインをしながら自分のオリジナルのケースを作っていくっていうようなことをしている先生がいたので、その方に、「今度うちの薬局で教室やりませんか」っていうように声掛けし、できることになりました。
「自分の薬局をハブにする」っておっしゃっていた先生からもヒントを得られました。
この薬局アワードに参加したことによって、区議会議員の方が私の薬局のFacebookを見てくださっていて、ヒルマ薬局さんも地域の活動に参加しませんかっていうようなお声掛けをいただきました。
そこから今、社会福祉協議会に参加させていただくようになって、地域包括で自分たちの地域をどういうふうにしていくかっていうような会議にも参加させてもらえるようになりました。
それも、薬局アワードでいろんな先生たちが発表していくものを聞いて、すごく自分の中で感じるものが出てきたからだなって思っています。
小さな声でも、いつかは大きくなっていく
比留間:
行動していくといっても、いろいろと難しい場面ってたくさんあると思うんですが、自分が正しいと思うことをきちんと貫くことができるか、その根底となるものも、この先ほど出したドリームマップの中にはあるのかなと思います。
ドリームマップって、いわばみんなの思いが詰まったものであって、自分たちが大切にしたいもの、それをきちんと絵に、ビジョンに表したものだと思っています。
実際、薬剤師の世界って、いろんな権力とか上からの力っていうのが多分あって、やりたくてもできないこと、やりたくてもなかなか思うように進まないことって、もしかしたら、たくさんあるかもしれません。
逆も然りで、やりたいと思ってることをやってこられた方もたくさんいると思います。
それでも、まだまだやっぱり、権力のようなものにどうしても逆らうことができずに、夢破れていった方々がたくさんいるんじゃないかなと思います。
だからこそ、私はこの薬局アワードでこの発表させていただける機会を得られるっていうのが、すごく重要だなと思います。
小さな声でも、いつかは大きくなっていく。その変化をたどっていくことが、一番のとても大きな出来事の始まりなんじゃないかなと思っています。
必要なのは、自ら変化を作り出していくこと
比留間:
ダーウィンの言葉で「生き残る者とは、強い者でも賢い者でもなく、変化に対応できる者である」っていう言葉をよく聞くと思うんです。
実際、強い者でも賢い者でもなくて、変化に対応できる者が、時代に生き残っている。でも私自身、生き残るだけじゃやだなってすごく思っています。
変化に対応できるからといって、生き残っているだけではなくって、自ら変化をつくりだしていくこと、これが必要なんだなとすごく感じています。
それが、この薬局アワードで発表することによって、皆さんの発表を聞いて自分の薬局にも変化をもたらすことができたし、自分自身も変わってきたということを半年間ではありますが、すごく感じているものがあります。
多分、皆さんの会社の中でも、薬剤師の方やその他の従業員の方、事務職の方でも、もしかしたら心の中に思ってる声があると思います。
それをきちんと言葉にして大勢の前で伝えてみる、とても勇気の要ることだし、やったことがない方にとっては、そんなこともういいよって思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、その心の声を外に出したときに世界が変わっていく。そしてハイクオリティな薬局を創っていくことができるんじゃないかなと私は信じています。
それを生み出していくっていうことが自分自身、薬局アワードで最優秀賞をいただいた責務かなと感じてもいます。
ドリームマップ、ゆくゆくは電子薬歴に入れたい
司会:
比留間先生、どうもありがとうございました。少しお時間があるので、ちょっと質疑応答の時間を設けようかなと思います。ぜひ比留間先生に聞いてみたいことがあるかたは。
質問者:
ドリームマップは、皆さんの前で貼ったりしてるんでしょうか。
比留間:
はい、してますね。全員分。
薬局アワード後、ちょっと発展して、お客さまにも自分自身がどういう夢を叶えたいから、この治療をしているのか、っていうようなところまで関われるように、ちょっとずつですけれども進んでいます。
本当はドリームマップを電子薬歴に入れたいんですね。ただ写真が撮れないので、なかなかそこの整合性がつかないんですけれども、ゆくゆくはそういう薬歴にしていきたいなと思います。
それを薬剤師が見ることによって、お客様はこの夢を叶えたいからこの治療をしているんですね。っていうふうに結び付けていきたいなとすごく思っていますし、ただお医者さんに言われてるからこの薬を飲んでいるっていう状況を脱してもらいたいなと。
自分自身がこうなるためにこの薬を飲んでいるんだ、っていうふうに考えてほしいからこそ、それを実現していきたいなと思って関わっています。
今日はどうもありがとうございました。
勉強会では、講演の他、薬剤師や他の医療関係者の方とのグループワークもあり、色々な考えをお持ちの方々と意見交換できる貴重な機会となってます。
次回開催は2018年3月の予定。皆さまの参加をお待ちしています!
全国から、創意工夫している薬局の取り組みを募集し、独自の審査基準に基づいた厳正な審査を行い、最終的に代表薬局を選出。一般の方を対象とした「みんなで選ぶ 薬局アワード(決勝大会)」にて発表します。審査員と会場にお越しの一般の方の投票により、最優秀賞の薬局を決定するイベントです。 ※主催:一般社団法人 薬局支援協会
カテゴリ一覧