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医薬品ネット販売 制度改正 メリットとデメリット 対策
改正薬事法が平成26年6月12日に施行されたことで、これまでネット販売が禁止されていた第1類医薬品と第2類医薬品の販売が原則解禁となりました。
薬のネット販売をめぐっては、推進したいネット事業者と禁止したいドラッグストアや厚生労働省との間で議論が行われてきました。
しかし、2013年1月、最高裁が厚生労働省がネット販売を一律に禁じた省令は違法であると判決を下しました。これを受けて安倍首相は同年6月、安全ルールを確保した上で全種類の市販薬のネット販売を解禁すると発表していました。日本経済の活性化に繋げたいという思惑もあります。
今回、施行された改正薬事法はこの一連の動きを受けたものです。
この改正により、一般用医薬品のうち99%をこえる医薬品がネットで買えるようになります。
「要指導医薬品」の新設
しかし、全ての一般用医薬品が購入できるようになったわけではありません。
今まで第1類医薬品に分類されていた一部の医薬品は、「要指導医薬品」として、対面販売を行うこととされています。
大まかに医薬品を分類を見てみましょう。
- 一般用医薬品
- 要指導医薬品
- 医療用医薬品
1. 一般用医薬品
: 適切なルールの下、全てネット販売可能(第1類、第2類、第3類)
- 第1類医薬品は、これまでどおり薬剤師が販売し、その際は、
- 年齢、他の医薬品の使用状況等について、薬剤師が確認
- 適正に使用されると認められる場合を除き、薬剤師が情報提供
- その他の販売方法に関する遵守事項は、法律に根拠規定を置いて省令等で規定
2. スイッチ直後品目・劇薬(=要指導医薬品) : 対面販売
- スイッチ直後品目・劇薬については、他の一般用医薬品とは性質が異なるため、要指導医薬品 (今回新設)に指定し、薬剤師が対面で情報提供・指導
(※スイッチ直後品目とは→ 医療用から一般用に移行して間もなく、一般用としてのリスクが確定していない薬) - スイッチ直後品目は、原則3年で一般用医薬品へ移行させ、ネット販売可能に
3. 医療用医薬品(処方薬) : 引き続き対面販売
- 医療用医薬品については、人体に対する作用が著しく、重篤な副作用が生じるおそれがあるため、これまでどおり薬剤師が対面で情報提供・指導
要指導医薬品、第1類医薬品は、対面販売を行う際、情報提供と共に、販売記録の作成が義務付られました。
また、要指導医薬品は、購入者本人が使用者で有ることの確認が必要であり、家族が代理で購入を求める場合は、基本的にNGです。
※ 厚生労働省 医薬食品局 総務課 「一般用医薬品のインターネット販売について」
さて、薬のネット販売が拡がることで、どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか?
薬のネット販売のメリット
- いつでもどこでも買える
- 他人の目が気になる薬が買いやすい
- 添付文書などの情報を購入前に提供できる
- 実店舗より安さが期待できる
ネット販売業者は、メリットとして一番に利便性を挙げています。
忙しくてドラッグストアの営業時間に買いに行けない人や、近くに薬局がないなどで困っている人たちにとっては、ネットでの購入は時間や場所の制約がないため、便利です。
また、水虫やデリケートゾーンの薬などの対面販売では他人の目が気になり、恥ずかしい、買いづらい薬を購入しやすいともしています。
購入前に添付文書や説明文書を確認できるため、情報を吟味した上で、購入者が選択できます。ネット販売は、安さが魅力のため利用する人も多いです。
どんな医薬品にも副作用リスクはあるが、「対面販売だから安全」とは限らないと主張しています。
しかし、日本薬剤師会や、日本チェーンドラッグストア協会、全国薬害被害者連絡協議会などは、解禁に反対してきました。
薬のネット販売のデメリット
- 安全性が確保できるか
- 一人ひとりに合った提案ができない
- 犯罪につながるリスク
1. 安全性が確保できるか
一番心配されていることは、安全性の確保です。
一般用医薬品でも、年間250例の副作用被害があり、2007年度から5年間で24件の死亡、15件の後遺症が報告されています。
販売店が情報提供を行っていたとしても、消費者側に十分な知識がなければ、正しく判断できません。
「今まで副作用が起きたことはないから自分は大丈夫」
「説明書に副作用が書いてある薬は怖くて飲めない」
「面倒だから、説明書は読んだことない」
薬局でよく聞かれる会話です。
「どんな薬でも副作用が起こる可能性はある」と説明するとびっくりする患者もいますし、「説明に書いてあると全て起こってしまう」と思い込んでいる患者もいます。
消費者の「情報の解釈」には、知識不足による幅がありすぎて、不安を覚えます。
自分の症状に下した診断が正しいのかどうか?自分が選んだ薬に関して自己責任を全うするだけの知識がないケースが想像できます。
2. 一人ひとりに合った提案ができない
対面販売であれば、より症状に合うものを提案できます。受診勧告を行い、販売しないという選択もあります。現場で患者と直に接している人たちは、ネット販売が拡がることで、利益優先で、安全性が軽視されるのではないか?ということを危惧しているのです。
3. 犯罪につながるリスク
また、偽薬や脱法ドラッグ、個人輸入など、ネット販売では、犯罪に巻き込まれたり、重大な健康被害を招くリスクも考えられます。消費者はきちんとした販売店を選ぶ必要性もあります。
それでは、次に今回の改正で決められたルールを確認しておきましょう。
一般用医薬品のネット販売のルールの概要
- 一般用医薬品の販売は、薬局・薬店の許可を取得した有形の店舗が行う。
- 一般用医薬品の販売は、注文を受けた薬局・薬店で、必要な資質、知識を持った専門家が行う
とされています。
ネットの他に、対面や電話での相談体制を整備する必要もあります。
次に、どのような流れでネット販売が行われていくのかみてみましょう。
販売の具体的な流れ
1. 使用者の状態等の確認(メール等)
- 性別、年齢
- 症状
- 副作用歴の有無やその内容
- 持病の有無やその内容
- 医療機関の受診の有無やその内容 ・ 妊娠の有無、授乳中であるか否か
- その他気になる事項(自由記載) 等
2. 使用者の状態等に応じた個別の情報提供等(メール等)
- 用法・用量
- 服用上の留意点(飲み方や、長期に使用しないことなど)
- 服用後注意すべき事項(○○が現れた場合は使用を中止し、相談することなど)
- 再質問等の有無 等
3. 提供された情報を理解した旨等の連絡(メール等)
- 提供された情報を理解した旨
- 再質問・他の相談はない旨
4. 販売(商品の発送)
販売店側からの情報提供を消費者が理解したか、質問事項がないか確認の連絡が取れてから、やっと販売ができます。
おわりに
販売店側も、安全性の確保のために、制度を遵守して取り組んで行かなければいけません。
セルフメディケーションの考えを拡めることで、過度の医療機関への受診を減らし、医療費削減に繋がるメリットも考えられます。消費者側も、メリット・デメリットをよく理解し、状況に応じてネット販売も対面販売も上手に利用して欲しいと考えます。
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