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病院薬剤師から薬学生をサポートする予備校講師の道へ
山岸康子(やまぎし・やすこ)プロフィール
薬剤師/ 学校法人医学アカデミー 薬学ゼミナール 川越校 講師
山形県長井市出身。奥羽大学卒業。大学病院でNSTや緩和ケアチームなどのチーム医療に携わりながら、2年間薬剤師業務に就くが、「薬学生をサポートをしたい」との思いから薬剤師予備校の講師に。2012年より薬学ゼミナール仙台校に勤務。現在は、川越校にて講義。青本や薬ゼミリメディアル本の執筆にも関わっている。
※薬ゼミブログ 川越教室
忙しかったけれど、充実していたチーム医療の現場
小学生の頃は体が弱く、病院には頻繁に通っていたこと、看護師の祖母もいたことから、医療系の仕事は身近で、憧れのような思いがありました。それに我が家は母子家庭だったので、手に職を持つことの必要性もどこかで感じていました。そうした経験から自然と、薬剤師という道を選んでいたんです。
撮影: 土佐麻理子
薬剤師として最初に勤務したのは、山形の大学病院。最初の配属は調剤室でした。
午前中は調剤室で入院患者さんのお薬を払い出し、午後はフリーな時間だったので、チーム医療の現場に加わることもあれば、病棟に行って服薬指導をしたり、看護師と一緒に薬の使い方について話し合ったり… そして、夜は患者さんの治療方針を決めるカンファレンスに出たりしていました。
チーム医療の体制ができあがっている病院でしたので、NST(栄養サポートチーム)に入れてもらったりもしました。最終的にはPCT(緩和ケアチーム)に入りました。
そうして、1つの病棟を受け持たせてもらえたのは入局して3か月後のこと。私が担当したのは、甲状腺系の病気や舌癌などのがん患者さんが多い病棟でした。喉頭がんや下咽頭がんで手術を受けると、声帯を切除するため声を失ってしまうため、術後はしゃべれなくなってしまう患者さんもいましたね。
そういった患者さんとは筆談したり、補声器を使って会話をするのですが、患者さんの「来てくれてありがとう」という言葉をいただくたびに、涙が出るほど胸が熱くなりました。ほんの些細なことでも、自分にできることがあるって、やはり嬉しいですから。
そんな患者さんに気持ちよく過ごしてもらえるように、少しでもお役に立てることがあればという思いで仕事をしていましたね。
医師や看護師と話をする機会もあり、病院薬剤師としては良い環境で働けていたと思います。
しかし、仕事を始めて1年半ぐらい経った頃、「このまま緩和ケアの専門薬剤師の道に進むべきか」それとも「やってみたかったことに挑戦しておくべきか」ということで、だんだんと迷うようになってきて。
そんな矢先に東日本大震災が起きました。ちょうど山形の大学病院に勤務しているときで、これまでに経験したことのない大きな揺れで、本気で死ぬかもと思いましたね。
でも、それを機に「やりたいと思ったことをやらなかったら後悔する日が来る」と痛感し、やってみたかったことに挑戦しようと決めたんです。
やりたかったのは、薬学生をサポートする薬剤師予備校の講師
実は私、薬剤師の試験に1度落ちてるんです。で、次の国試のために1年間、予備校に通いまして。
国家試験に落ちたときは、自分だけが取り残されてしまった気がして、かなり落ち込んでしまったんです。
撮影: 土佐麻理子
でも予備校の講師が元気で明るくて、本当なら毎日勉強で苦しいはずなのに、その間も日々楽しく過ごさせてもらいました。
その予備校が、今、私が講師をしている「薬学ゼミナール(薬ゼミ)」だったんです。
だから、やるなら「薬ゼミ講師」と決めていましたので、転職活動をして、願いかなって薬ゼミ講師として道を歩めるようになったときには本当に感慨深いものがありましたね。
現役の薬学生だったころ、薬ゼミ講師の講義を聞いて、「あの難しい薬理がこんなにわかりやすいなんて、すごい!」と感動したのが入学の決め手だったのですが、華やかに見えた講義、実は「準備時間」が一番大変なんですね。
まず、講義やそこで使う教材について、教える科目は決まってはいるものの、毎年同じ内容であることはなく、講義の前には、授業に参加する学生の理解度や試験の傾向を踏まえ、内容を練り直します。
また、薬ゼミで模擬試験をするんですが、毎年その問題を作ったりもします。
さらに薬ゼミの授業以外にも、大学に行って国家試験の講義をすることもあります。もちろん、そのためのテキスト作りもあったり…講師になったこの5年間を振り返ると、本当にあっという間でした。
それでも、やはり毎年「合格しました!」と報告に来てくれる学生の笑顔を見ると、講師をやっていて本当に良かった!と思います。
カウンセリングについて学び、学生の心のケアができる講師になりたい
自分が生徒のときには、「卒業してしまったら自分のことなんて覚えていてくれないだろうな」と思っていましたが、毎年いろいろな生徒さんがいて、そういうたくさんの出会いがあるのが講師という仕事の魅力でもありますね。
私たち講師も最大限力になりたいと思っていますが、薬剤師の国家試験では、どうしても本人がどこまで本気でやったかが求められます。
そんな中、今でも忘れられないのは、「怒ってほしかった」という学生の言葉。
一度国家試験に落ちてしまった学生で「もう1年、一緒にがんばる」と言ってはくれたのですが、優しいだけじゃダメなんだ、怒ることも必要なんだなということをその学生から学びました。
私の今の目標は、学生の心のケアができる講師になること。予備校に入校してくる学生のほとんどが悩みや不安を持って入校します。その、悩みが原因で勉強に集中できない学生もいるのが現状です。
悩みは一人ひとり違いますが、その原因を取り去ってあげたり、緩和してあげることで、薬剤師としての学生さんの道をつくってあげたいなと思っています。
これまでは学生の話を聞いてあげるだけで終わってしまっていたこともありましたが、今後はカウンセリングについて学び、メンタル面でのサポートもしていきたいですね。
薬剤師免許を持っているので、常に薬のことにはアンテナを張りつつ、講師として薬学生のよき手本となれるように今後も自分自身を高めていきたいです。
取材・文/川端真弓、写真提供/薬学ゼミナール
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