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マイ・ファーマシストライフ! 第1回 笠原正幸さん
笠原正幸 (かさはら・まさゆき) プロフィール
株式会社トレジャー たから薬局 川口店勤務 / こどもとな企画者 / 「薬剤師 ONAIR!!」オーガナイザー
神奈川県横須賀市出身。昭和薬科大学卒業。2010年より薬剤師として勤務するかたわら、2014年に、子どもと大人とをつなげるイベントを企画・運営する「こどもとな」を設立。FacebookやYouTubeで、薬剤師を紹介する動画コンテンツ「薬剤師 ONAiR!!」も手がけている。
迷走した果てにたどりついた、薬剤師の道
薬剤師を目指した理由はシンプルでした。
高校時代の大好きな先輩が、薬学部に進学したんですね。また、僕は部活で副部長をしていたので人から「話を聞いてほしい」と頼られることが多かったのですが、それがうれしかったこと。
薬剤師なら人の話も聞いてあげられるし、知識を生かして人の役にも立てる。
そういう仕事は向いているんじゃないかと思って、自然に僕も薬学部に入りました。
ところが、一旦決めていた薬学の仕事なのに、卒業ギリギリになって、あまり魅力を感じなくなってしまったんです。
実務実習では病院を選んだのですが、正直、そんなに楽しいと思えなかった。
MR(製薬会社の営業職)にもトライして受かったんですが、考えてみたら、MRって患者さんと話す仕事ではないわけです。
「薬剤師になりたい」と思った自分の出発点は、人に寄り添うことだったのに、結果的にはそうなっていなくて。モチベーションが維持できず、迷走しているうちに国家試験に落ちたんです。
結局、卒業延期となり、半年遅れで卒業し、翌年に資格を取りました。
実はその間、さらに迷走したんです(笑)
というのも、クラスメイトは皆ひと足先に就職していて、ぽつんと残されたような気になってしまったんです。それでよけい、中国へ旅行してみたり、早朝4時からのパン屋のバイトをしてみたり、ふらふらと過ごしていました。
そんなころ出かけたトルコ旅行が、僕を薬剤師の道に戻してくれるきっかけをくれました。
旅先で出会ったあるトルコ人の男性と話していて、目標のためにどのくらい辛抱できるものかという話題になったんです。
日本だと、石の上にも三年と言いますし、僕も3年くらいが区切りかと思っていたんですが、彼はさらりと「トルコでは5年だな。自分も夢のために5年はがんばれる」と言いました。
僕は彼の覚悟に感動して、もやもやしていたものがきれいに払われたんですよ。
ならば初志貫徹してみようと、福島・郡山の調剤薬局でキャリアをスタートさせました。
福島で東日本大震災を経験。薬剤師としての流儀を見つめ直すきっかけになった。
最初の勤務地は、郡山市の基幹病院の前にある調剤薬局でした。
処方箋が1日200枚くらい集まる大きなところで、そのせいか、いくつもの症状を抱えていたり、症状が重かったりした患者さんが多かったですね。
じっくり説明を聞きたがる人もいて、そういう人にはていねいに話をしたいと思う一方で、枚数をこなすスピードも求められる場所でした。
確かに待っている患者さんが大勢いらっしゃる以上、淡々と処理していくことも大事ですが、それを素直によしとできない自分もいました。
僕が思い描いていたような薬剤師の仕事の理想と現実のはざまにいた感じです。
そんな矢先に、東日本大震災が起きたんです。
ニュースでもたびたび放送されていましたが、被災地では病院や薬局が倒壊したり流されたりし、医療への不安が大きくなっていました。
その分、薬剤師の役割はにわかに大きくなりました。
なのに、僕はまだキャリア1年未満。完璧な役割を果たす自信がなくて不安も感じていましたね。
たとえば、とある患者さんに「あの日に放射能を浴びたんじゃないかと思う。ヨウ素は飲んだけど、あとはどうしたらいい?」と聞かれても、何を答えたらいいんだろう、この人を不安にさせない言い方ってどうすればいいんだ、とぐるぐる考えてうまく返せない。
そのとき救いになったのが、兄や職場の先輩からの「話を聞くことだけでも、いまは患者さんたちの力になっているんじゃないか」という言葉でした。
自信を回復できたと同時に、今こそ話を聞いてあげられる人は求められているのではないか、そういう人を増やさなくてはいけないという使命感が生まれました。
現状にこだわらず、計画された偶然から変化を生み出したい。
そうやって薬剤師の活動は自分なりに積み重ねていたのですが、あるとき偶然、友人のイベントに参加したんですね。
その参加者の中に、たまたま母子家庭の親子がいて、他の大人が面倒を見ていたんです。
それは僕自身、とても揺さぶられたすばらしい体験でした。
実は僕は母子家庭で育ったので、テレビが友だちのような幼少期でした。親は仕事で忙しかったし、かといって兄弟以外の年長者や大人と触れ合う機会もなかった。
だからこそ、子どもは大人に可愛がられ、大人は子どもから刺激をもらえる。そういう環境で子どもと大人が交わるのって本当にいいなと。
大人が子どもの面倒を見てあげる活動というのは結構あるんですが、僕はそれだけじゃ満足していなくて、子どもはいろんな大人のアクションを通して幅広い学びを得、大人は子どもの真っ直ぐさを見て子供ゴコロを取り戻せるような、双方向型の場をつくりたい。
そんな思いの中で「こどもとな」の活動は生まれました。
僕は、クランボルツ理論というのにとても興味があるんですね。
それは俗称で、正式にはスタンフォード大のクランボルツ教授が考案した「計画的偶発性理論」というキャリア形成の考え方です。
どういうものかというと、一般的にキャリアは自分が選び取って積み上げていくものだと考えられていますが、実はキャリアの8割は予期しない偶然によって決定されているとクランボルツ教授は言うんです。
逆に考えれば、予期しない出来事を待つだけではなく、周囲の出来事に意識を向け、偶然を意図的に作り出して変化をつけていこうという意識を持とうというものです。
「あの偶然は起きるべくして起きた」ということを成功者はよく言いますが、僕なりに解釈すれば、キャリアアップに必要なのは、出会いや出来事から謙虚に学び、臨機応変に対処していけるかどうかが大事だと。
それが自分の成長にもつながっていくでしょうし、「こどもとな」の活動にもそうした変化を期待しています。
これまでは、薬剤師と「こどもとな」や「薬剤師 ONAIR!!」の活動は、どれも別々の流れでした。
それが今やっと、大きなひとつの流れにしていけるかもしれないという予感があります。
現に、薬剤師の後輩たちと一緒に、薬のフリーペーパーを作ったり、彼らにも「こどもとな」の活動に参加してもらって、いいフィードバックが生まれたり。
「こども薬剤師体験」なども企画して盛り上がりました。
薬剤師だけにこだわっていたら、何の結実もなかった気がします。
薬剤師として地域への貢献も大切にしたいのですが、それ以外の活動と合わせてマネタイズしていくことも少しずつ考えたいと思っています。
偶然から生まれる副産物を大事にしながら、薬剤師とビジネスマンという両軸の営みを広げていきたいですね。
ファーマシストライフ編集部 (取材・文/三浦天紗子)
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