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仕事が楽しくて、ママ薬剤師時代は子育て×ダブルワークの日々 – 薬剤師・村上百代さん
村上百代 (むらかみ・ももよ) プロフィール
薬剤師/漢方薬生薬認定薬剤師/セミナー講師/美容サロンアドバイザー
長野県出身。1981年、北里大学薬学部薬学科を卒業し、大手製薬会社に就職するも、男性優位の職場環境に失望し、1982年末に退職。1983年1月より、漢方薬局、美容院、鍼灸治療院も併設する「株式会社自然美システム(以下、自然美)」に薬剤師として勤務。美容、健康をテーマにしたテレビや通販番組などにも出演。育児のかたわら、会社と自宅近くの調剤薬局とのダブルワークをこなす。2014年末に同社を退職、以後フリーランスとして活動する。
現在は、調剤薬局でのパートタイムを続けながら、不定期に、漢方の知識を活かした講演やセミナーを行う。また、半蔵門の美容サロン「アイ・スペシャル琥珀」にて、月1回ほどアドバイザーを務める。
著書に『年をとるほど健康になる人、なれない人──薬剤師が教える 薬を飲まない「ずくなし」健康法』(自由国民社)、『二十四節気に合わせ心と体を美しく整える—医者にも薬にも頼らない和の暮らし』(ダイヤモンド社)がある。※ブログ「薬剤師・村上百代の漢方コラム」
丸ごと人間を治す東洋医学に惹かれて
薬剤師を目指したのは、軽い統合失調症だった母のことがずっと気がかりで、何とか治せないかと思ったことでした。
薬学部を卒業して、製薬会社に入りました。当時は、男女雇用機会均等法以前でしたので、入社年数や実績とは関係なく男性というだけでお給料がよかったり、女性だけがお茶くみしなくてはいけなかったり。
研究室の配属でしたが新薬の研究に直接関われるわけでもなく、経時変化の確認試験の毎日でした。
ルーティンワークに倦(あぐ)んでいくにつれ、もっと根源的な心身の健康への関心が芽生えました。
結局は母は西洋薬では治らなかったことへの物足らなさもあり、手探りでいろいろ学んでいくうちに、学生時代は半信半疑で敬遠していた漢方を見直すようになりました。
西洋医学は人間を機械のパーツのように見立てて悪いところを取り替えるような治療をしますよね。
一方、漢方は、気血水のめぐりなど全体のバランスを見ながらその人の不調を丸ごと整えていく。
朝目覚めたら窓を開けて太陽を浴び、適切な食事を心がけるといった考え方を根幹に持つ漢方は、生き方にもつながるのではないかと思えたんですね。
そんなころ、「自然美」という会社を知って、24歳のときに転職したんです。
病の悩みに囚われず、前向きに生きるためのアドバイスをしたい
「自然美」は、髪の悩みを解消するだけでなく、その先の全身の健康や美を目指す総合的な健康美容サロンを有する会社でした。
人は案外、大きな苦しみの渦中にいても、小さな悩みに囚われたままだったりします。極端なことを言えば、戦争が始まったとしても、白髪が増えたことばかり気になるとか。
私自身、母のことでいつも悩みに囚われているような状態でしたので、カウンセリングにも興味があり、心理学も勉強しました。
「○○が痛いから自分はダメなんだ」というふうに悩みに縛られず、ネガティブなことにもつきあっていける自分になってもらえるような前向きなアドバイスができたら、自分も幸せではないかなと思うようになりました。
そんな中、漢方の診断法をベースに、お客さまの体質や体調、生活習慣などをカウンセリングして、その方に合ったケアをご提案していく仕事は、私が求めていた働き方にすごくフィットしました。
シャンプーなどヘアケア剤も自社で作っていたので、その商品開発に関わったり、雑誌の掲載、朝の情報番組やショップチャンネルのようなテレビの通販番組などに呼ばれて女性の髪の正しいケアなどを解説したりするのは、楽しかったです。
ショップチャンネルには、9年くらい出演したでしょうか。
それ以外にも、地方に出張してカウンセリング相談会を開いて営業もしましたし、自然食品のショップで店頭販売の売り子もしました。本当にさまざまな仕事を経験し、自分が薬剤師という感覚はあまりなかったかもしれません。
けれど、自分の薬学の知識を活かして製品を作るのも、患者さまの悩みを聞いて適切な処方をするのも、それで「ラクになった、よくなった」「本当の自分の生き方に気づいた」と喜んでいただけるのは、やりがいというか、本来の生きる道を見つけたような気がしましたね。
調剤薬局での仕事もスタートさせ、二足のわらじを履くようになったのは39歳くらいのときです。
まだ子どもが小さくて手がかかったので、まずは家の近所の調剤薬局で。その後、大きな病院の門前の薬局や、街なかの薬局などいくつか変わりました。
同じ会社で勤め上げて出世を狙う人もいるでしょうが、私は転職でいくつかの薬局を経験したことで、薬の種類をたくさん覚えられましたし、スキルアップのためにもよかったなと思います。
私たち薬剤師は、処方箋による調剤を、医師の診断に則って行います。
けれど、かかりつけで担当している患者さんの薬を何度も調剤していると、違う処方を考えた方がいいのではないかと思うこともあります。
その点、漢方でしたら、私自身が症状に合わせて処方できるんですよね。漢方薬の処方は経験則もとても大事なので、知識だけわかっていてもうまく臨床できない。そこが興味の尽きない部分でもあります。
子育て×ダブルワーク。ママ薬剤師時代の喜びと苦悩とは
結婚は当時としては遅かったです。仕事漬けの毎日が楽しくて、バブル崩壊後に婚活を始めたのが32のとき。
相手に求める条件でいちばん大きかったのは、私の仕事の邪魔をしないこと(笑)。
結婚退職する女性の多かった時代ですが、仕事が私のアイデンティティーという意識だったので、辞める気はありませんでした。
幸い、夫は全面的に協力してくれ、子供の熱のために何度か夫に有休や半休を取ってもらったこともあります。
夫も妻が外でイキイキ働いている方が嬉しいし、家で愚痴を聞かされなくていいと思ったのかもしれません。
地方出身者なので親に預けることもできず、何とか仕事と家庭を両立させていくしかなかったんです。
ただ、自然美の会社の方では、当時子どもがいて働いている女性はいなくて、職場で子どもの話はできませんでした。授業参観を理由に休んだりもできない。
「おつかれさま」と、会社を出た途端に保育園まで猛ダッシュする日々でした。
逆に調剤薬局では、子どものいるママ薬剤師さんが多かったですね。
途中で一旦キャリアを中断させてもマイペースで働けるのが薬剤師という仕事のいいところでもあります。
預け先が見つからず、病気の子どもを薬局の休憩室に寝かせておいたこともありました。
娘はいまだに冗談で「お母さん、私の扱いひどかったよね」と言いますが、苦笑いするばかりです(笑)。
ただ、もし3人目が生まれていたら、さすがに辞めるしかなかったかも。子ども3人分の保育園代が、私のお給料と同じぐらいでしたから。
10年前くらいに母も父も逝って、次に自分が骨を拾ってもらう番だと思うと、やり残しのないように新薬や心理学や漢方の勉強をして行動に起こそうとしています。
最近は、調剤薬局に週4、5日のペースで働くほか、自著をもとにカルチャースクールやひきこもり等青少年自立支援事業でお話させていただくなど、少しずつ地域貢献もしています。
というのも、東洋医学の豆知識って、みなさん楽しんで聞いてくださるんですね。
たとえば、親指の爪の甲の横の根っこあたりに「少商」という肺経(肺の経絡)のツボがあるのですが、風邪気味だとここがコリコリ硬くなるんです。風邪を引きかけているなと感じたときにこのツボをほぐすと、症状がすぐに改善されます。
また、食べ放題でお腹がいっぱいになったけれど「元を取るのにもうちょっと食べたい!」と思ったら、足首を回すともう少し食べられるようになるはずですよ。とか。
そんなふうに、楽しく、いい塩梅で生きるお手伝いするのが、私のやりたいことなんです。
西洋医学の薬はますます進歩していますし、東洋医学との融合も進んできています。
これからも学び仕事を続けたい。いろいろな経験を経たいまだからこそ、最後に残ったのが薬剤師としての自分だという気持ちでいます。
ファーマシストライフ編集部 (取材・文/三浦天紗子、写真/土佐麻理子)
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