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これから生き残る薬剤師と薬局に必要なこと – ららくま薬局 熊谷信さん【第3回】
長野県諏訪市で薬局を開業した熊谷信さんに薬局薬剤師と薬局経営の「今」と「未来」というテーマでお話を伺っています。
シリーズ最終回では、薬剤師や個人薬局がこれから生き残るために必要なこととは何か、熊谷さんに聞いてみました。
薬剤師がこれから生き残るために必要なこと
―これからの薬剤師にはどのようなことが必要だと思いますか?
熊谷:
私たち薬剤師が提供できる価値は何なのか、報酬に見合った仕事ができているのか、医者側なのか、患者側なのか、どこを向いて仕事をしているのか、まず真剣に考える事だと思います。
今まで病院でもらっていた薬を薬局でもらうようになり、場所が変わったというだけで、そこで何か別の価値が提供できているのか?聞かれて答えられる薬剤師は果たしてどれくらいいるのでしょう。
もう少し患者さんのほうを向いて取り組もうよと言いたいですね。
これからの薬剤師は、幅広い薬の知識だけでなく、世の中の情勢や色々な出来事がある中、薬を介してその患者さんにアプローチしていくことが必要だと思います。
つまり、もっと広い視点でその患者さんの生活を支えるというか、『薬を飲むことで、その患者さんの生活がどう変わるのか』というもっと遠くを見て行こうよということです。
薬局薬剤師は医療費全体で見ると調剤報酬が非常に伸びていて、伸び率も大きいものですから、色々と批判があり、何かあると「薬局と学習塾が増えている」などと批判をされることもありますよね。
お薬を棚から持ってきて「ハイ、終わりです」というような仕事の仕方をするということがあり、よく医療職の中で手を汚さないのは薬剤師だけだと言われたりすることもあります。
それに、私が自分で開局したから言うわけではありませんが、勤務薬剤師がこれだけ増えた状況ですと、会社=薬局となってしまい、薬剤師ではなく会社員になっている人が多いのではないかなと感じています。
要は『言われた仕事をして、終わったら帰る』という働き方になってしまっているんです。
残念ながら一時の腰掛的な仕事の仕方をする人もいますし、仕事に対するスタンスにちょっと軽さがあるのかもしれません。
よく言われることに、ドクターは患者に対し『自分の患者さん』だという意識が持てるが、薬剤師はその意識が持てないと。そういったところで、ちょっと引いた存在になってしまっているんですね。
薬剤師も『自分の患者さん』という意識をもっと持つべきではないでしょうか。
ただ単に、患者さんが持ってきた処方箋を受けて、「これはこうやって飲んでください。お大事に」というままでは、今後は厳しいと思います。
―熊谷さんご自身は患者さんに対して気を付けていることはありますか?
熊谷:
自分が知っていることを当たり前として話してしまう薬剤師もいますが、私の場合は、患者さんの立場にたった分かりやすい説明を心がけています。
これは、患者さんにも一段深く理解してもらうためです。
具体的にいうと、お薬を渡す際には、「これは、こう飲みます」だけでなく、起こり得る副作用や違う飲み方をしたら、どういうよくないことが起こりうるだとかいうことまで含めて指導するようにしています。
そうすることで、例えば、患者さん自身が飲み忘れに注意深くなったりするなど、患者さんの生活の中での意識も変わると思うのです。
個人薬局がこれから生き残るために必要なこと
―これからの薬局にはどのようなことが必要だと思いますか?
熊谷:
本来であれば、薬局や薬剤師が処方薬だけではなく、汎用している薬やネットなどの情報を整理し、提供できればいいなと思いますね。
ただ、それで私が具体的に何をできるかというと難しいところがあります。
他の薬局もそうですが、処方箋がメインになってしまっていて、なかなか未病や予防対策までは手が回せない状況なのではないでしょうか。
ただ、「処方箋じゃないからお断りしますよ」とか「それはうちではやっていないからわかりませんよ」ではいけないなと思っています。
薬剤師バッシングについてもそうですが、なぜ薬局バッシングが起こっているのか、そこに問題の本質と解決策があると思います。
―ズバリ、薬局が生き残るために大事なことは何だと思われますか?
熊谷:
これは経営者となったからこそ、言えることでもあるのですが
- 守りに入らないこと
- 既存の業務やルーチンワークだけこなして満足しないこと
- クリエイティブであること
この3つは大切で、仕事をする上で常に意識すべきだと思っています。
これまで、多くの薬局は「調剤専門」のようなスタイルで大きくなってきました。
しかし、今後は『調剤薬局』にプラスアルファできるようなものを、ニーズに応じて、自ら作り出すことも大切だと思ってます。
近年、「処方箋がないと薬局に入りづらい」といった国民からの声もありますし、私の場合はその辺でできるだけ気軽に立ち寄ってもらえるようなことを常日頃から考えているつもりです。
それはOTCだったり、在宅だったり、漢方だったり、個々の薬局や地域性によって異なるので、利用者や地域にとって必要なものは何なのか、しっかり見極めることが必要なのではないでしょうか。
ちょっとした会話の中から、その患者さんが望んでいることを推察して、言葉の裏にある「想い」を汲み取るという意味では、人間力というか社会性も大切だと思いますね。
私自身、常に患者さんの動きに気を配る、またニーズに迅速に対応することを意識しています。
例えば、最近はおむつの相談が多いのですが、性質上、ドラッグストアのようなところだと自分で選んで買って、それで終わりですよね。
サイズ感や使い心地について「この商品、ちょっと違うな」と感じたら、別のものを再度購入するか、我慢して使うかしかない。
その点、きめ細かなサービスができるのが個人薬局の良さだと思っています。
私のところでは、その方のご要望に細かく合わせながらメーカーにそれぞれ聞き、問屋さんにお願いしてサンプルを何種類か取り寄せ、お客様の感想を聞きながらその人に合ったものを選んでいただき、自宅まで届ける。ここまでやっています。
本当に必要なものであれば、売れ筋だとか薬局の利益といったことに囚われず、取り扱うことが求められるのではないでしょうか。ですので、そういったサービスはこれからもやっていきたいですね。
―最後に、これから開業を目指す薬剤師の方へメッセージをお願いします。
熊谷:
開業は大変なことも多いです。
勤務であればしなくて済むような苦労もありますし、プライベートの時間も大きく削られます。
ただそれらを考えても、気持ちの面の充実度は非常に高いものがありますし、やればやっただけ得られるものも多いです。
焦らずに、開業への道を着実に進めてださいね!
おわりに
「医薬分業」により成長してきた調剤薬局。現在、分業率は約7割に達し、大手調剤チェーンを中心にコンビニなどとの提携も進められ、まさに「調剤ビジネス」と呼ばれるほど、その市場は拡大しています。
ビジネスと捉えれば、今後も薬局経営にはチャンスは多いと思われますが、「患者さんに早く治ってもらいたい」「少しでも楽になってほしい」「自分が患者さんの生活を支える」という熊谷さんのような意識は、経営者であろうと薬剤師であろうと持ち続けてほしいものですね。
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薬剤師。1973年長野県生まれ。96年信州大学経済学部卒業、2002年東邦大学薬学部卒業。自動車ディーラーの職に就くが、「自分で薬局を開きたい」との思いから、社会人入試を経て薬剤師に。2004年、くまがい薬局を開局したが、3年4カ月で廃業し、勤務薬剤師に。2014年4月、長野県諏訪市にららくま薬局を開局。
ご本人のブログ「薬局のオモテとウラ」が連載中の他、日経DIコラム熊谷信の「薬剤師的にどうでしょう」、薬局新聞コラム「ソーシャルPメンター&ニュース」も執筆中。
[取材・文:川端真弓]
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