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【第3回 後編】薬局業界を法律家の立場でサポート – 弁護士・薬剤師 赤羽根秀宜さん
薬剤師時代に培った知識と経験が
あるからこそ、弁護士として、
より踏み込んだ法的支援ができる
と考えています。
※ 第3回 赤羽根秀宜さん【前編】はこちらからご覧いただけます。
医療の現場がわかっているのが強み。変革の時期を迎えているからこそのサポートを。
ー医療訴訟への関心から弁護士になられたとのことですが、とすれば現在扱っていらっしゃる案件は、そうした裁判ばかりですか。
弁護士になったきっかけは医療訴訟だったんですが、主に企業法務や損害賠償、相続の問題など民事事件を扱っています。
とはいえ、医療や薬剤に関わる案件や相談はやはり多いです。
もっとも、裁判や訴訟などの“紛争”ではないものが圧倒的ですね。
たとえば、 “電子おくすり手帳”のシステムをつくりたいとか、医療機関同士で情報連携したいといったお話ですね。
その場合、法的な懸念点はどこにあるのか。個人情報をどうあつかうのか。
また、サプリメントを始め、健康ビジネスにも、薬事や医療の問題がついてまわります。検討することは山積みです。
そうした薬事業界や健康ビジネスならではの問題点を、現場感覚を持って理解できるので、ふつうの弁護士さんよりは的確にアドバイスし、法的な貢献ができると自負しています。
ーなるほど。では、今後はできれば、医療訴訟の専門性を高めたいと考えていらっしゃいますか。
さきほど、私は、医療訴訟が過剰に被害者救済に向かう流れを止めたいと思っていた、とお話ししました。ですが、そのあたりは正直なところ、少し変わってきています。
なぜなら、医療や薬剤の過誤と損害の填補(てんぽ)とをリンクさせてしまうと、医療従事者が責任を認めるか否かということになり、なかなか決着も付きません。限界もあります。
また、過失はなかったと判断された場合に、一切保証が受けられないという問題もあります。
ならば、それらをつなげて考えるのをやめて、
不適切と思われる医療を受けた場合は、医師や薬剤師に過失があったなかったとは関係なく、被害を保証されるようにしましょう。その上で、そうした過誤が繰り返されることのないよう専門家の中で適切に対応していきましょう。
という形が生まれ始めています。
医療事故調査制度などもスタートしていますが、責任追及とは分けて運用すべきです。
ですから、いまは「積極的に医療訴訟に関わりたい」というより、「医療裁判そのものをできるだけなくしたい」と思い始めています。そのために何ができるかを考えていますね。
ーほかにも、薬剤師の仕事をめぐり、法律家として気になっている問題はありますか。
かつては国が医薬分業を指導し、結果、個人が薬局を始めて、調剤バブルと言われていた時期もあります。
そのころ個人経営の薬局を始めた人たちは団塊の世代くらいが多く、そろそろ承継について考えなくてはいけなくなっています。
子どもに相続させるのかどうか。跡取りがいなくて売却するとなれば、大手のチェーンなどに売るのか、従業員に売るのか。
そのときに知っておくべきリスクや戦略などの啓発はぜひしたいですね。
いまや、薬局の店舗数は全国に約5万7000軒。5万4000店あるコンビニエンスストアよりも薬局のほうが多いと言われています。
そのほとんどが中小の個人経営で占められており、大手10社で寡占率が15%未満です。
現代の日本において、その寡占率の低さはとてもめずらしいことなんですが、それでも5年前と比べれば、大手の力は強まっていますし、中小の調剤薬局さんを吸収していくM&Aも盛んです。
また、この4月にまた、【診療報酬改定】が行われます。
日本では2年に1度、医療サービスの公的価格を見直されているのですが、医療費削減の流れから、今回の見直しで、いままでのようには薬局の利益は上がらなくなるのではないかともささやかれています。
薬局や病院は、患者さんからは消費税を取っていないため消費税の負担の問題もあり、消費税が上がれば、単純に経営は厳しくなります。
そのほか、最近持ち込まれる相談には、昨今の薬剤師不足が影響してか、超過勤務が常態化しているとか、職場を辞めさせてくれないなど労働問題も多いですね。
薬を管理し、患者さんに渡すことが第一義だと考えてしまう心情は、僕にもよくわかるんです。
けれど、法に反していた等のちょっとした風評被害で患者さんが離れていけば、すぐに立ちゆかなくなります。
患者さんとのやりとりの中で、薬をめぐる紛争を避けるための説明責任もあります。
そういったことを意識しているか否かで、経営のリスクはずいぶん変わってくるはずです。
ー最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
ロースクールの学生だったころにアルバイトをしていた薬局の社長から、「応援してるからね。シフトとか、いいようにしなよ」と裁量していただき、弁護士になってからも変わらずお世話になっています。
そうした恩返しの意味も込めて、経営者や管理者の方向けの定期的な勉強会を開きたいと思っています。
もともと薬局業界には、法的にやらなければいけないこと、やってはいけないことなどいろいろな枷があります。
コンプライアンスの問題一つとっても、これまであまり意識を向けず、慣習のままでやり過ごしてきたせいで、顕在化してきた問題もあるわけです。
薬局さんの悩みを改善するための情報共有など、今後厳しくなるといわれている業界だからこそ、法律家の立場として積極的にサポートしていきたいですね。
ひいてはそのことで医療の現場がよくなり、よりよいサービスを国民に提供できるような結果に帰依できれば本望です。
目下の悩みは、ごく個人的なことですが、薬剤師時代より圧倒的に仕事漬けで、家庭との両立が厳しいことですね。
時間があれば、家でグータラするより、子どもとスノボに行ったり、釣りやキャンプに出かけたりと、連れ出したいほうなんですが、とにかく時間に追われています。
はっきりとは言われないのですが、たぶん妻は、僕があまり家事育児に参加できていないことへの不満をため込んでいるでしょうね…(笑)
赤羽根 秀宜(あかばね ひでのり)さん プロフィール
1997年に帝京大学薬学部を卒業し、薬剤師として薬局に勤務。その後、2005年に東海大学法科大学院に入学、働きながら弁護士を目指す。08年に同法科大学院を卒業。司法修習を終え、09年より、現在の法律事務所に入所(第二東京弁護士会)、弁護士としての活動を始める。その傍ら、東京薬科大学非常勤講師、帝京大学薬学部非常勤講師、東京薬科大学附属社会医療研究所教授を兼任。
活動内容
薬学の知識を生かして、医療や薬事、健康、介護にかかわる法的業務を多く扱う“薬剤師資格を持つ弁護士”。そのほか、会社法務や一般民事の案件も担当する。また、大学の非常勤講師として教鞭を執るほか、業界誌等での執筆、講演も多数。プライベートでは3児の父。
※詳しくは赤羽根秀宜オフィシャルサイト
※ 第3回 赤羽根秀宜さん【前編】はこちらからご覧いただけます。
ファーマシストライフ編集部 (取材・文/三浦天紗子、写真/岡本あゆみ)
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