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調剤ミス・医療過誤訴訟(1)
調剤ミスは死に至ることもあるだけに、薬剤師として決してあってはならないことです。しかし、人間ですからミスが絶対にないとは言い切れないのも事実です。
そこで調剤ミスを防ぐためにも大切な薬剤師の仕事のひとつが「監査」になります。もしも調剤ミスがあったとしても、きちんと監査をしていれば重大な事故を未然に防いだケースも過去にありました。
調剤ミスの事例
2011年8月、調剤ミスにより75歳女性が死亡し、薬剤師2人が書類送検されたのは記憶に新しいところです。
薬剤師が胃酸中和剤を調剤すべきところ他の薬剤を調剤。管理薬剤師は調剤ミスの報告を受けながらも、服用中止の指示や薬剤を回収しなかった結果、服用した女性が死亡したわけですが、こうなると医療事故ではなく“事件”です。
調剤ミスの原因についてスポニチに書かれていたのは、「県警によると薬局スタッフが調剤管理ソフトに胃酸中和剤を登録する際、誤入力したため」(2011/8/1)とあり、管理薬剤師は「失態を叱責されるのが嫌だった」と供述していたそうです。
また事件が起きた薬局の経営者は、当時、埼玉県薬剤師会会長という肩書きを持っていました。しかし、「客を待たせたくなかったので(部下に)薬の中身を確認させなかった」という理由から監査業務を怠っていました。薬局開設者として何たることでしょう。憤りさえ感じます。
埼玉県警では、調剤ミスに気付いた時点で患者さんに連絡をしていれば、死には至らなかっただろうとしています。
調剤ミスを防ぐ対策
こうした調剤ミスを防ぐ対策のひとつとして、薬害防止活動に取り組む薬剤師・藤竿伊知郎氏は「過誤は必ず起きる、人間に間違いはつきもの、機械はいつか故障する」という前提で対応を考えるべきだと語っています。
しかし、この事件に関しては調剤ミスの枠を超えた、薬剤師としてのモラルの欠如以外の何者でもないような気がします。
ただ、こうした論外な事件は別として、藤竿氏が語っているように薬剤師であれば誰もが調剤ミスを犯しかねないのですから、日頃から対策を考えておくことが重要です。
たとえば、同じ埼玉県内の中規模病院では、調剤管理ソフトに新しい番号を登録する際は必ず2人でチェックし、実際に動かして正しいものが出てくるかを確かめているそうです。また、調剤の際も処方箋と実際に小分けした薬が一致するかを毎回チェックしているといいます。
今回の事件で、同薬局では亡くなられた方以外にも、2010年2月下旬~4月までに約20人に計約2700錠を出していたそうです。幸い亡くなられた女性以外に体調不良を訴えた方はいなかったということですが、「うっかりミス」や「職務怠慢」では片付けられない事件であり、こうした薬剤師たちの対応が医療過誤訴訟になるケースは少なくありません。
医療過誤訴訟
最高裁が公表している統計では、2000年に新受した医療過誤訴訟の件数は794件、2002年は909件、2004年は1107件と年々増え続けています。もちろん、これは訴訟になった件数ですから、医療事故の発生件数はさらに多いはずです。
薬局開設者もしくは薬剤師に責任がある医療過誤訴訟には以下のようなケースが考えられます。
- 医薬品の取り違えなど調剤行為によって起きたミス
- 分包機の誤作動など調剤の際の器具に不具合が生じて起きたミス
万一調剤ミスにより患者さんに誤った薬剤を渡してしまったら、早急に患者さんに連絡し服用していなかを確認しましょう。
すでに服用してしまっていたら、患者さんの体に異常がないかを確認し、何らかの異常があるならすぐに適切な医療機関を紹介するなど、必要に応じた緊急措置を取りましょう。
詳しくは、日本薬剤師会から『薬局・薬剤師のための調剤事故発生時の対応マニュアル』をご一読ください。
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