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薬を盗む薬剤師の事件(その背景・未然に防ぐためには)
2011年暮れ、薬剤師が薬を盗む事件が2件立続けに発生しました。ひとつは12月に発覚した事件で、新潟の医療機関に勤務する薬剤師が大量の医薬品を盗み出し、ネットを通じて転売していたというものです。被害総額は2535万円に上ったそうです。動機は家のローン返済に困ったためというもので、深夜に薬局で一人になった時間に、かばんに薬品を詰めて持ち出したそうです。
また10月には、近畿大学医学部付属病院の倉庫から、勤務していた薬剤師が600万円相当の薬品を盗み出し、同様に転売していた事件が発覚しています。犯人はそうして得た金をパチンコなどに使っていたそうです。
事件の背景
どちらの事件にも共通するのは、発生から発覚までにかなりの時間が経っている事です。新潟のケースでは薬品の減り具合が異常に早い事に気付いた事がきっかけとなり、大阪のケースでは倉庫から持ち出された記録と処方の記録が合わない事がきっかけとなりました。それぞれに盗難の事実が明確になるまで数カ月を要しています。
この事からわかるように、どちらの医療機関も医薬品の数量の管理が徹底されていません。あるいはチェックが一定期間おきでしか行われていないために、盗難の事実が発覚するまでに時間がかかってしまいました。また、容易に持ち出せてしまう事も問題です。医薬品はほとんどの場合、軽量の瓶などに入っている場合が多く、かばんに入れてしまえば全く気付かれずに持ち出せてしまいます。
防止対策
まず医薬品の保管を厳しくする事です。貯蔵・陳列する場所には必ず鍵をかけ、責任者のみが施錠・解錠できる様にします。また、持ち出しと処方の量を常に監視し、そこに有意な差がないかを常にチェックします。近年では自動調剤機も開発されました。医薬品の持ち出しを調剤機で自動的に行う事により、盗難防止になるとともに量の管理も行う事ができます。
ただし、間違った医薬品を装填し本来の処方と違う薬が長期間調剤された事故も過去には発生しているので、初期の設定のチェックなどに対しより一層の注意が必要となります。
食品などで実用化されつつあるICタグを利用するのもひとつです。これを利用すれば医薬品を無断で持ち出そうとした場合、自動警報装置と連動して通報する事も可能となります。また、入出庫に伴う動的な在庫量の変化を自動管理することができ、数量の不整合もいち早く検知できます。
さらに、ネット上で医薬品の買い取りを行う業者にも、売主の身元確認や商品の入手ルートについて綿密に調査を行う事が求められます。あまりにも簡単に薬を転売ができてしまうシステムにも問題があるのではないでしょうか。
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