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第3回 このままでは危うい!?グローバル化できない日本の薬学界
前回、前々回と日本と海外の薬剤師事情についてお伝えしました。今回はグローバル化する社会の中で、薬学界の国際化がどの程度進んでいるのかについて杉林博士にお伺いします。
世界第3位の経済大国・日本。しかし、財政赤字や少子高齢化などの難題を抱え、これから経済大国としてどう進むべきか課題は山積みだ。
――日本全体がグローバル化してきていますが、薬学の世界はいかがですか?
杉林:産業や研究はもちろんはるか以前からグローバル化していますが、残念ながら実務と教育はかなり遅れていると言わざるを得ません。日本薬学会は、薬学教育にも大変熱心で日本で一番権威のある薬学領域の学術団体ですが、同様な研究者・教育者を擁す海外団体はありません。
――日本薬学会では、薬学関連諸団体との連携を強めることを目的とした「薬学総会(仮称)」の開催を検討しているようですが、それでも国内での動きに留まっているのでは?という声もありますが。
杉林:日本薬学会も努力して海外との交流や働きかけを行っています。日本薬学会が、国内での薬学教育に重要な働きかけをしているのもうなずけます。ただ、外へ向けての発信や交流がまだ少ないと思います。また、逆に、海外の薬学界も日本薬学会を重要なパートナーと考えていないように感じます。
――先生が会長をされている日本薬剤学会では、国際シンポジウムの企画・運営もなさっていますが。
杉林:薬剤学会は1985年に設立され、今年で27年目になります。この4月に公益社団法人となりました。最初にアメリカと交流を始め、次にヨーロッパとの交流をスタートし、フランスとも盛んに交流があります。そして、その広がりはアジアへも発展しています。世界薬学連合(FIP)にいち早く参加しています。参加の時期はなんと日本薬学会より早いのですよ。
――それはすごい!それぞれの団体の目的や立場もあるのだろうとは思いますが、国際化という意味では薬剤学会のほうが、かなり進んでいるわけですね。
杉林:そのように自負しています。国内では薬剤学会よりも薬学会のほうが遥かに知名度は高いと言えます。ただし、海外の薬学関係者から見れば薬学会よりも薬剤学会のほうがよく知られていると思います。
――薬学界の国際化を見据え、今後はどのように対応していくべきなのでしょう?
杉林:まず「知る」ということが大切です。アメリカ・ヨーロッパ・アジアなどがどうなっているのかを知らずに、日本の薬学をこうしましょうなどと言っていること自体がナンセンスですから。ただ、大変残念なことですが、薬学の世界ではそのナンセンスがはびこっています。
日本の薬剤師の歴史を振り返ってみると、富山のくすり売りから始まり薬草などを扱う薬種問屋など、薬の知識を持つ人々が江戸時代から存在していた。ただし、その頃は治療に必要な薬は医師たちが自ら調合し患者に与え、江戸時代後期になると西洋医学が日本に持ち込まれ、モルヒネやキニーネなどの西洋薬が使われ始めるようになった。
この時代の薬学界のヒーローと言えば、外科医でもあり「通仙散」という麻酔薬を開発した華岡青洲になる。世界で初めて全身麻酔による手術を成功させたことは、薬学に関係なくとも知っている人は多い。
やがて明治に入り開国。西洋医学・薬学が導入され、ようやく科学的な研究開発が始まった。破傷風菌の研究に従事した北里柴三郎博士を筆頭に、志賀潔、野口英世、高峰譲吉、長井長義博士などが日本の薬学界をリードしていった。
北里博士は33歳のときにドイツに留学し、ベルリン大学のローベルト・コッホ研究室で細菌学の研究を。志賀博士も31歳でドイツに留学、35歳で帰国するが42歳の時に再びドイツに留学。野口博士はアメリカ、高峰博士はイギリスで学んでいる。
化学者・医師たちの間では海外留学は当然のようなところがあるが、「薬剤師」となると海外で学ぶ人は少ない。だからこそ、日本の薬剤師にもっと海外を見て、知ってほしいと提唱する杉林博士。
海外の薬学を見ることは、同時に日本の薬学を深く知ることにもつながる。明治時代からの古い体質がはびこっている日本の薬学界。それ故に「このまま行くと危うい」という想いが非常に強いと危惧する杉林博士。次回は、国際化を視野に入れたこれからの薬剤師に必要なモノについてお話を伺います。
[ 取材・文: 川端真弓(ライター) ]
>第4回 国際化を視野に入れたこれからの薬剤師に必要なモノ に続く
薬学博士/城西大学薬学部長/公益社団法人日本薬剤学会長。1951年滋賀県生まれ。’74年富山大学薬学部卒、’76年同大学院薬学研究科修了。 同年、城西大学薬学部助手。講師、助教授を経て’98年教授。 この間、’82,’83年ミシガン 大学、ユタ大学留学。日本香粧品学会および日本動物実験代替法学会理事、日本香粧品学会誌編集委員長。 2英文誌のeditorial board。著書「化粧品・医薬品の経皮吸収」監訳(フレグランスジャーナル社)、「化粧品科学ガイド」(フレグランスジャーナル社)、次世代経皮吸収型製剤の開発と応用(シーエムシー出版)、「生物薬剤学」(エルゼビア)他。
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