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【第3回】専門薬剤師認定団体の増加の不思議とインターン制の義務化を !?
この時代に生き残る薬剤師と、これからの薬剤師業界の変化について、星薬科大学 薬物治療学教室の亀井淳三教授にインタビュー!今回は連載 第3回。
亀井教授からみた、今と昔の薬学生の違い、薬剤師の違いについてを伺っていきたいと思います。
教育制度が4年制から6年制に変わったことで、薬学生や現場の薬剤師の間でどんな変化があったのでしょうか。
また、2016年4月に始まった「かかりつけ薬剤師制度」については、大学でも開催している認定研修の受講生に変化があり、さらには認定団体が増加するという現象が起きているといいます。
揺れ動く薬剤師教育の課題と新たな実務実習システムの模索について、詳しくお話を伺いました。
6年制教育によって、薬剤師という仕事の重要度が増しています
──亀井教授からご覧になって、最近の薬学生はどうでしょう。薬剤師という職業に、どんなイメージをもって入学してくるんでしょうか。
これは星薬に限らず、どこの大学、どこの薬学部にも共通する課題だと思うのですが、薬剤師の役割や存在意義をはっきりとイメージして入学してくる学生はやはり少ないですね。
現実を言えば、「資格があれば一生働ける」、特に女子学生はそのような手に職の意識で入学してくる人が多いのではと思います。
それでも、6年制がスタートしてからは、初めから本気で薬剤師を目指しているとか、医療現場で働きたいという覚悟をもって来る学生も、増えてきています。
また、講義というものは「ここは国家試験に出るよ、出ないよ」という意識で聞いていたら楽しくない。
しかし、星薬では研究をベースにした教育をしていますから、学生たちの中には、カリキュラムを通して薬学のイメージが変わり、薬剤師という仕事について真剣に考え直したという子も見かけます。
──教育制度が4年制から6年制になって、薬学生にいい変化もあったわけですね。
意識の変化よりも、実務実習による経験値の変化が大きいと思います。6年制になって、注射剤の混合や無菌操作など実技のレベルはかなり高くなりました。
4年制だった時代に卒業して長く薬局で働いている薬剤師の中には、「処方箋通りに調剤すればいい。それを患者さんに渡せば仕事は終わり」というような、勉強しなくてもなんとかなるという甘えた意識で働いている人もいます。
当然、6年制のいまの学生とは知識や実務のレベルも違うため、新旧で軋轢が生まれることもあると聞いています。
※イメージ写真: PIXTA
──となれば、むしろ現場の薬剤師の側に危機感があるんでしょうか。
そうですね。薬剤師資格は一度取ってしまうと更新しなくていい。医師のような専門医制度もありません。
それでは薬学のプロとして期待されている役割に追いつけないというので、厚労省が旗振りをして2016年4月から始まったのが「かかりつけ薬剤師制度」です。
すると、どんな変化が起きたかというと、かかりつけ薬剤師認定の礎となる「認定薬剤師」を取得しようとする薬剤師の急激な増加です。
「かかりつけ薬剤師指導料の算定」には、認定薬剤師認証機構として活動している認定研修機関による研修を収め、薬剤師として一定水準以上の知識・技能を備えていると認められることが条件です。
星薬も研修機関として「認定薬剤師」の認定研修を開催していますが、かかりつけ薬剤師制度が始まる前は1回の研修に多くても100名程度の受講生であったのが、制度が始まるやその数は3倍近くに跳ね上がるという状況になっております。
これまで自主的に研修を行っていなかった薬剤師が、かかりつけ薬剤師になるための要件を取るという理由であっても、新しい知識を得ようとする行動を起こしてくれたことは、まあ、それで良いかなと思っております。
しかし、せっかくの向上心ですから、できれば資格のためではなく、患者さんのための勉強だと心して努力してほしいと思っています。
この認定薬剤師制度によって、薬剤師の仕事の幅が広がり、患者さんの健康に貢献できるのであれば歓迎すべきことなのですが、一方では、専門薬剤師認定を謳い、多くの新しい学会が安易に作られ、認定団体としての看板を掲げ始めている現状に不安を覚えます。
本来は「少しでもいい医療を患者さんのために提供したいから」、あるいは「チームの医師たちといい関係を築くために専門的な勉強をしたいから」、そういう意欲のある仲間が集まってチームになり、長年の活動を経て「学会」になっていくものです。
ところが最近では、学会ができて1年にも満たないうちに「認定団体」を名乗り始めるケースがあります。
私に言わせれば、認定ありきというか、認定の称号を生み出したいがために学会を立ち上げたようにしか見えません。
行っただけで完了という現在のOSCE(オスキー)を見直したいと思っています
──ところで、6年制教育にさらなる意味をつけるために、大学がすべきことは何でしょうか。
嘆かわしいことに、まだ多くの薬学部が旧態依然としており、個性をもって薬剤師教育をすることが難しい環境にあります。
表向きには「我が校ではこういう薬剤師を育てます」という何らかの理念は掲げてはいますが、実情は、薬剤師の受験資格を持った卒業生を輩出しているだけです。
どういう薬剤師を育てるかという指針は、6年制教育が始まったときに考えておくべき内容ですが、星薬では少しでも現状を改善しようと、2016年10月に全学の教員を集めて、FD活動を行いました。
そのときに何を打ち出したかというと、「オスキー」の改革ですね。
ポスト・クリニカル・クラークシップ・オスキー(PCCオスキー)、すなわち【実習後のオスキー】を導入しましょうという提案をしました。
オスキーは、医学部や歯学部、獣医学部、6年制薬学部の学生を対象にした、基礎的な技能や知識、臨床能力が身についているかどうかをみるシミュレーション型の教養試験のようなものです。
※イメージ写真: Fotolia
薬学生であれば、実務実習に出る前に、患者や来局者への対応はどうか、薬剤の調整や調剤の監査など薬学の基礎知識があるかなどが問われます。
そしてクリニカル・クラークシップ型のオスキーは、実際の医療チームの一員として臨床実習するものです。
しかし、そこで技能やコミュニケーションの面できちんとできていたかという判断は、曖昧なんですね。
病院にしろ薬局にしろ、学生が実習を行った先が「実務実習の課題はすべてやりました、終わりました」と言えば、大学はそれを認めざるを得ない。
成果は関係なく自動的に単位が取れるというのでは、実習にどれほどの意味があるのかと考えてしまいます。
そこで、星薬は文科省から委託され、実務実習が効果的に行われ、知識や技能が適切に身に付いているのかを確認するために、PCC オスキーによる検証実験をしているんです。
いま2年目で来年までの3年間の予定です。この結果が、いまの6年制開始とともに導入された実務実習のシステムが本当にいいのかどうか、ひとつの提言になるのかなと思っています。
正直なところ、私自身は、学生として6年を過ごさせるより、4年制に加えて2年間の実務研修を義務化し、そこで初めて薬剤師資格を得られるような形態がいいと思っています。
医師免許と同じように、インターンの時期を作るということです。
2年間のうち、1年は薬局で1年は病院というのでもいいでしょう。4年制で仮免許ののような形を取り、インターンとして2年の実務研修後に国家試験の受験資格を得られる。
その方が、ペーパーテストでみるにしても、本当の意味で実力がついているかがチェックできるのではないでしょうか。
ファーマシストライフ編集部
(取材・文/三浦天紗子、写真/土佐麻理子)
> 次回「チーム医療に「協関力」が不可欠 !?」へ続く
第1回 (2017/01/30公開)
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第2回 (2017/02/06公開)
薬学の知識だけでなく解読力も、薬剤師に求められる !?
第3回 (2017/02/13公開)
専門薬剤師認定団体の増加の不思議とインターン制の義務化を !?
第4回 (2017/02/20公開)
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第5回 (2017/02/27公開)
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1956年、香川県生まれ。'83年星薬科大学大学院博士後期課程修了。2002年より、星薬科大学教授。厚生労働省医道審議会専門委員、厚生労働省薬剤師試験委員会委員など学外委員も多く歴任。研究テーマとして、1)慢性咳嗽の発症機序および病因の解明2)糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームに伴う中枢および末梢神経系の機能変化とその分子機構の解明 を挙げている。280報以上の原著論文を発表している他、Principle Pharmacotherapy(ネオメディカル)、『治験薬学―治験のプロセスとスタッフの役割と責任』(南江堂)など著書も多数。
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