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企業薬剤師になるなら必ず知っておくべき製薬業界の現状
2012年4月は薬学部6年制時代を経た初めての卒業生が社会人となりました。今年は制度の移行による人材不足が発生していため空前の買い手市場となりました。これまでとは違った資質を持つ新卒社会人が誕生したと言われていますが、製薬業界そのものにも大きな変革の波が訪れています。
M&A
2000年に1396社あった日本の製薬企業の数は、現在では380社足らずに激減しています。これは2000年代に業界の再編が進み吸収・合併を繰り返したためです。10年前に存在した名前の通った大企業で現在も存続しているのは武田薬品とエーザイと塩野義製薬くらいで、多くは別の会社に生まれ変わりました。以下はその一例です。
山之内製薬&藤沢薬品 → アステラス製薬
第一製薬&三共 → 第一三共
田辺製薬&三菱ウェルファーマ → 田辺三菱製薬
大日本製薬&住友製薬 → 大日本住友製薬
また外資に目を向けてみるとファイザーがワーナーランバートやファルマシアなどを次々と買収し、世界一のメガファーマとなりました。他にも大型の合併事例が多くあります。この外資企業のM&Aによる巨大化は、日本の企業にとって脅威となり、その結果国内大手の合併が加速したといわれています。
大手のこうした動きに伴い中小の医薬品メーカーの数は減少の一途をたどりました。このように巨大な企業と一部のベンチャーだけが生き残る両極端な構造になりつつあるのが、現在の製薬業界の特色といえます。
2010年問題
医薬品業界にとって大きな問題になったものに「2010年問題」があります。これは2010年に主要な医薬品メーカーの多くの新薬が欧米での特許切れを迎え、大きく売り上げを落とす問題でした。特許が切れるとジュネリック医薬品を販売することができ、多くの企業が同じ薬効の製品を安価で提供するために、先発薬の売り上げは急速に下がっていきます。
このために各社の利益への影響は避けられない事態となりましたが、次の主力となる新薬の供給、自らジェネリック製薬を発売するなどの様々な工夫でこの問題に対応しています。
ジェネリック医薬品
現在厚生労働省は医療費削減の目的で、ジェネリック医薬品の普及を推し進めています。そのために医薬品全体の売り上げのうち約1/4をジェネリック医薬品が締める現状になりました。医療費の削減効果も大きいという結果が出ています。先発薬メーカーにとっては売り上げの大幅減にも繋がるので、業界全てにとっては必ずしも好材料とは言えないと思われます。また、ジェネリック薬を中心にしている企業の再編も加速しており、今後も変化の激しい分野であるといえます。
バイオベンチャー
製薬企業の大きな社会的な役割は新薬の開発です。すでに自然界の成分は取り尽くしたと言われています。また、研究室で合成できる化合物にも限界に近づいていると言われています。化合物はこれまでは効果の高い低分子化合物が中心でしたが、現在は高分子化合物が注目を集めています。これはバイオ医薬品とも呼ばれます。その中でも現在の主流は抗体医薬品と呼ばれるもので、体の中に抗体を入れてがん細胞などの抗原を体から追い出す仕組みで病気を治すものです。
こうしたバイオ医薬品を開発する技術は従来の大型企業にはなく、高い技術力を持つ新興会社が注目されはじめました。これをバイオベンチャーと呼びます。現在は、大手によるバイオベンチャーの買収が活発化しています。
以上、キーワードを中心に製薬業界の現状を見てみました。次の10年後には一体どんな変化が訪れているでしょうか。
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