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どうすれば病気の人を減らせるか? 辿り着いたのは”薬学からみた予防医療”【第1回】
かなり異色の経歴をもつ薬剤師・体内環境師®の加藤先生について、インタビュー第1回の今回は、薬剤師でありながら、なぜ薬を用いずに癒すという道を選んだのか、そして起業からアカデミ―設立のエピソードまで、詳しく伺っていきます。
加藤雅俊(かとう・まさとし) プロフィール
薬剤師・体内環境師®。大学卒業後、日本ロシュ株式会社(現在:ロシュ・ダイアグノスティックス)に入社し、研究所(現在:中外製薬研究所)にて血液関連の開発研究に携わる。プロダクトマネージャー就任後、全国の病院を見て回るなかで、医療現場の問題点に気づき、10年働いた会社を辞め起業。名古屋でリラクゼーションサロンを開業。その後、東京銀座にもサロンを展開しつつ、六本木に体内環境師養成学校を設立。予防医療に関する著書は累計販売数160万部以上。
医療はホスピタリティから出発しないと根本的に治らない
――医療現場の問題点に気づき起業ということですが、ロシュといえば世界トップ10に入る大手製薬会社。薬剤師として、いわば将来が約束された状況に思えます。そのような環境のなかで、何が独立を決めるきっかけとなったのでしょうか。
製薬会社で、学術として営業と一緒に病院を回っていた時期があるのですが、医師の時間が空くまで待合室で待つんですね。
そのとき、先生と患者さんのやり取りを聞いていて、「え?」って思う医師が多かったんです。
患者さんの顔も見ず、パソコンの画面を見ながら説明する医師。
難しい言葉でまくし立て、上から目線で横柄な態度の医師。
たしかに大病院では一人当たりの診療時間も絞っていることが多いので、患者さん一人一人に懇切丁寧に説明することが難しいのでしょうが…
やはり患者さんは、自分が重い病気かどうか、不安な気持ちでいっぱいです。
ですから、そんななか自分を頼ってきた患者さんに対して、せめて「心配しなくてもいいですよ」など不安をやわらげる言葉を掛けてほしいのですが、そのような対応をしている医師があまりに少ないことに、残念な気持ちでいっぱいになりました。
――その後、予防医療を目指し起業されます。実際に開業してみてどうでしたか?
最初は名古屋でサロンを開業しました。ボキボキ系のマッサージではなく、リラクゼーションを目的としたやさしくほぐすマッサージとアロマテラピー、オイルマッサージを行いました。
今から20年以上前なので、まだ「癒し」という言葉も一般的には使われていませんでした。しかし、当時は自律神経不調の人が多く、会社を辞めたり、心の病気の人が増えてきた時代。
そういった人たちに癒しの場を提供できないだろうかとの思いで始めたんです。
それに、ただマッサージをするだけじゃなく、始める前のカウンセリングにも時間をかけました。
「ここに来たら大丈夫ですよ」「安心してくださいね」「治るまで付き合います」といった言葉を大切にしてきたのは、製薬会社時代にみた医師たちの反応が反面教師となっていたから。
やはり、医療はホスピタリティから出発しないと根本的に治らないですし、そのような「声がけ」ができなければ医療は成り立たないと思っていましたので。
コミュニケーションから始まり、話をきくだけでもいい。今、僕ができることをやろうと思いました。
マッサージにアロマテラピーをプラスすることで「いい香りにつつまれて幸せな時間でした~」「気持ちよくって寝てしまいました~」と言って、笑顔で帰っていくお客様もいれば、マッサージ目的というよりも、ひたすら自分の話を聞いてほしいというお客様も多いのです。
やはり、それも含めて医療なのかもしれない、と考え方も変わっていきましたね。
着実に口コミで広がり、サロンに芸能人やスポーツ選手が通ってくれたり、プロアスリートのフィジカルトレーナーを務めることもあり、そうして徐々に客足は増え、最初は小さなサロンからのスタートでしたが、3年目で黒字になり、市内に2店舗目を作ることができました。
病院に通わせない方法を考えた結果、”薬学からみた予防医療”に辿り着いた
――名古屋のサロンの後、東京銀座でもサロンを展開しつつ、六本木で「心と体の両方」をみるセラピスト養成のためのアカデミーを展開されますね。アカデミー開設の転機は何かあったのでしょうか。
実は名古屋のサロンに来ていただいた方の中には、実際には重篤な症状の方もいて、リラクゼーションのレベルではないこともありました。
現在のような心療内科なんて無かったので、「精神科に行くと薬を飲まされるからイヤ!」という人たちが僕のところに来ていたんです。
どうしたら良くなるのだろう?と勉強していたら、だんだんと心理学から脳科学へと移行していきました。
そこでわかったのは、来ていただいた方の心と体の不調のほとんどは、ストレスや食の偏り、運動不足によるものだということ。
そんな方々の慢性的な症状改善のために、セルフメンテナンスの方法を知ってもらおうと、ストレッチ、アロマ、食についてのセミナーも開くようになりました。
そんなある日、「ストレッチから食から、先生のすべてを学びたい!」という弟子希望の生徒さんが現れまして。
自分がそれまでに培ってきた知識や技術を埋もれさせてしまうのはもったいないですし、僕自身も自分がやっていることをたくさんの人に教えていきたいという思いが強かったんでしょうね。
そこで何ができるかな?と考えたときに、自分と同じような人を世に送り出すスクールを作ろう!となって、日本ホリスティックセラピストアカデミーを立ち上げたんです。
同時に、より多くの方々に僕の考えを知ってもらおうと、本も執筆しました。
――そして、56歳の現在でも、母校の昭和大学薬学部で博士号をとるための研究をされていますね。どんな考えがあるのでしょうか。
実は医療改革をしたいと思っているんです。
今、60歳を過ぎると当たり前のように飲んでいる降圧剤もやめてもらえるように、いかに高齢者に薬に頼らない生活をしてもらうか。
また、薬学でどう予防医療を広めていくか、なのですが、たまたま教授から「だったら研究を続けて博士をとった方がいいんじゃないか」と声をかけていただいたのがきっかけです。
通常の医療において患者の体や病気を診るのは医学であり、医者の領域。
一方、体内に入る薬や栄養だけじゃなく有害な食べ物などの成分が、どう吸収・分解されるかといった薬学に関しては僕ら薬剤師の領域。
医師の中には薬の副作用について自ら積極的に勉強している方もいますが、それでも薬のプロではありません。なのに、日本では薬学を深く知らない人が処方箋を書いている。
例えば、不摂生や運動不足が原因の高血圧の場合、生活習慣そのものを改善しなければ根治は無理です。しかし病院に行くと、原因も調べずに血圧が高ければ降圧剤を出します。
そして病院に通い続けて、薬を飲み続けて…そもそも、ちっとも治そうとしていないし、そんなんじゃ一生治らないのではないでしょうか。
僕から言わせてもらうと、杖から車椅子になり、寝たきりになるのを助長しているだけ。最初から治療ではなく緩和ケアをしているだけなんです。
医療のゴールって、薬が必要無くなる、病院に通わなくて済むことなんじゃないかと思うんですよね。
でも今の医療では病気の人は病気のままだし、薬もやめられない。医療が本来目指すべきゴールとは全く違う方向を進んでいる。
僕も製薬会社に入ったからわかったことですが、そこにはいろいろなカラクリがあり、そのほうが製薬会社も国も儲かる。
だからその流れはなかなか変わらないのですが、そこに逆らうよりも、「じゃあ僕ならどうやって病気の人を減らせるんだ?」と病院に通わせない方法を考えました。
その結果、いまの”薬学からみた予防医療”に辿り着いた、というわけなんです。
次回「【第2回】薬学をベースに薬剤師がもっと「食」を学べば、活躍の場は広げられる」に続く
ファーマシストライフ編集部(取材協力: 川端真弓 / 写真: 土佐麻理子)
大学卒業後、日本ロシュ株式会社(現在:ロシュ・ダイアグノスティックス)に入社し、研究所(現在:中外製薬研究所)にて血液関連の開発研究に携わる。プロダクトマネージャー就任後、全国の病院を見て回るなかで、医療現場の問題点に気づき、10年働いた会社を辞め起業。名古屋でリラクゼーションサロンを開業。その後、東京銀座にもサロンを展開しつつ、六本木に体内環境師養成学校を設立。予防医療に関する著書は累計販売数160万部以上。
※詳しくは JHT日本ホリスティックセラピストアカデミーをご覧ください。
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